happy

□Happybirthday! シャイニング!
1ページ/3ページ





その日、いつものように事務所へ行ったわたしは、エントランスに入った瞬間言葉を失った。

……………ナニコレ。

その場に立ち尽くして、ただまばたきを繰り返す。


「…………。」


わたしは無言のまま事務所を出ようとした。

だって、もしかしたら間違って違う建物に入ってしまったのかもしれない。

いや、そうであってほしい。

心の中でそう願いながらドアを出ようとして、でもそれは突然聞こえてきた笑い声に阻止された。


「HAHAHAHAHA〜。うたさんどこへ行くのですか〜?」

「……おはようございます。シャイニングさん。」


わたしはしぶしぶ挨拶をしながら、声の方を振り返った。

でーんと仁王立ちをしている我がシャイニング事務所の社長、シャイニング早乙女。

シャイニングさんの次の行動は読めない。

今回のこれがいい例だ。


「……シャイニングさん、」

「なんですかー?」
「"これ"、なんなんですか?」

「ん〜??見てわかりませんか〜?」


わかりません。


そう言いたいところだけど、"これ"がなんなのかわからないほどわたしもバカではない。

これはどう見ても…………


「…………巨大ケーキ」

「ピンポンピンポーーーン!正解でーーす!」


そう言って、くるっとキレイにターンをキめるシャイニングさん。

本当にキレイに回るな、なんて考えたが、それをすぐに頭から追い出す。

そんなターンなんてどうでもいい

なんで事務所のエントランスにこんな巨大なケーキがあるのか、わたしが今知りたいのはそれだ。

でもそれを直接シャイニングさんに聞く前に、わたしはふと気がついた。

そっと視線を動かして、エントランスのカウンターに置いてあるカレンダーを見つめる。

そこに置いてあった日付は11月22日。

一般的には『いい夫婦の日』なんて呼ばれる日だが、わたしたちにとっての11月22日は、


「…………誕生日……」


そうだ。今日シャイニングさんの誕生日だ。

忘れていたわけじゃない。

最近日付感覚が狂っていたせいで、今日がその日だと把握していなかった。
多分、龍也さんもそんな感じだと思う。

昨日だって大量の書類を持って帰って来てたし、仕事も忙しそうだった。

きっと、これ見たらまた頭抱えるんだろうな

なんて他人事のように考えながら、わたしははるか上にあるシャイニングさんの顔を見上げながら口を開いた。


「で、これは?」

「ミーのバースデーケーキでーーす!」


だと思った。

わたしは少しだけ肩をすくめた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ