happy
□Happybirthday! 林檎!
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「あ、」
ふと目に留まったカレンダー。
今日の日付にはでかでかと赤丸が書いてある。
「そうだ。今日林檎さんの誕生日だ」
わたしはカレンダーの前で立ち尽くしていた。
決して忘れていたわけではない。
ただ、ちょっとばかり準備を怠っていただけ。
「どうしよう…」
わたしは呟いて、壁掛けの時計を見上げた。
最初に言っておくが、祝わない気は一切ない。
むしろ祝う気満々だ。
だって、林檎さんの為に用意したシナモン抜きのアップルパイは予約済みで、しかも宅配便で届けてもらっているし、部屋だって片付けてある。
プレゼントだって、この間欲しいと言っていた新色のペディキュアを用意した。
しかし
しかしだ。
わたしは一番重要なことを忘れていた。
「……23:00」
壁掛けの時計が示す時間を見てため息をつく。
嗚呼、どうしてわたしはこう詰めが甘いんだろう。
「林檎さんに声かけるの忘れてた…」
祝う相手がいないのにどうやって誕生日を祝えと言うのだ。
わたしのバカ野郎。
「……。」
無言で携帯の画面を見つめる。
呼び出した番号はもちろん林檎さんのもの。
発信ボタンを押せばすぐにでも連絡を入れられる。
だがここでまた問題がある。
「……23:00」
わたしはまた呟いた。