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□「夏」と学園祭の王子様!
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 お盆の時期だった。滅多に鳴ることのない私の携帯が、着信を知らせた。誰かと思って携帯の画面を覗くと、夏の旅行の時に出会った人の名前が表示されていて思わず口角が上がる。

「もしもし!」

 通話ボタンを押してから携帯を耳に当てると、聞き覚えのある声が鼓膜を揺らした。

『俺だ』

 それは名前ではなくて一人称だ。相変わらずの様子に、私はクスクスと笑った。

「お久し振りです、跡部さん」

 あぁ、と軽く頷いた彼は、前振りもなしに本題に入る。

『お前、月末…。八月二十日から九月四日は暇か?』

 唐突に聞かれたことに答える為に、私はスケジュール帳を開いた。えっと、と呟きながら日程を確認するが、そもそも友達と遊ぶ予定を立てた覚えもない。真っ白なスケジュール帳に、買った意味はあるのだろうかとこっそり自問した。

「暇です!何の予定もありません、宿題と学校以外は!」

 一応宿題の殆どを夏休み前半に終わらせてはいるが、手を付けていないものもいくつかある。終わっていないのはいつ終わらせようか、と思索に耽りそうになるのを、跡部さんの一言が遮った。

『丁度いい。俺と榊先生で、とある計画をしている。それに参加しねぇか』
「計画?」

 またよからぬことを考えているのか、と思わず聞き返すと、跡部さんは電話の向こうで不機嫌になった。

『バーカ。流石にあんなことやった後だ、変なことはしねぇよ』

 そうですか、と安心する。ならばどんな計画なのか。それはすぐに跡部さんの口から聞かされた。



『……ということだ。どうだ、やってくれるか?』

 計画を全て話した後、締めくくるように問われた。私は悩むことなく頷く。

「もちろんです、やらせてください!」

 私達の夏は、あの遭難で終わってはいなかった。まだまだ夏は終わらない。今から楽しみで、高鳴る鼓動が抑えられそうになかった。

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