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□諦め切れぬと諦めた
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 夏を終え、秋を迎え。もう季節は冬だ。私は最近までテニス部のマネージャーをしていたけれど、今は引退して毎日が退屈だった。引退してからはテニスコートに近寄ることもなく、数少ない女友達と遊び暮らしている。ちなみに、受験が近いとか考えたら負けだと思うの。
 クラスは凛や裕次郎と同じ二組。でも。引退するまではしょっちゅう話していた彼らとも、今は話すことの方が少ない。

「やーは、あぬ二人ぬどっちかと付き合うとうむたん」

 ふと、話してた友人に言われて、私は苦笑した。彼女の言い分はきっと最もで。それくらいに私はテニスをしている彼らに惹かれていた。でもそれは、二人だけじゃない。

「テニスしちょる姿が格好良かったぬやあったー全員さー」

 永四郎も、慧も、寛も、知弥も、浩一も。全員格好良かった。大会が終わってすぐに告白されていたら、恐らく付き合っていただろう。多分、あの中の誰かだったら、誰とでも。
 節操がないかもしれないけど、私にとって彼らはそれくらい特別だった。

「やてぃん、特別しちゅんな奴くらいいたあんにー?」
「んー、そうでもないんどー?」

 粘る彼女に、私は誤魔化すように笑った。

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