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□翔
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イチ
よく晴れた日。よく鳥が空を行き交う日。何故か斎藤と沖田は縁側で横に並び、茶を飲んでいた。
何故このような状況に至ったのか、斎藤は正直理解していない。斎藤が座っていると、当たり前に横に座ったのが沖田だ。
斎藤は沖田に気付かれないように溜め息を吐いた。
決して沖田が苦手な訳ではない。剣の相手としては最適だし、見習うところもある。
だが、こうして茶を飲みながらじっくり話す相手かと言えば、首を傾げるばかりだ。
「……一君」
ふと名前を呼ばれた。沖田の言葉が続くのかと思ったが続くことはなく、少しの間が出来る。疑問に思って沖田の方を振り返ると、沖田の視線は空を行き交う鳥にあった。
「総司」
「鳥が、飛んでるよ」
斎藤の呼び掛けに答えるように呟く。その視線は未だ空で、深い意味はないのかもしれなかった。
「そうだな」
だから、斎藤も深い意味なく頷く。すると沖田は、相変わらず視線はそのままに再び呟く。
「僕たちは地を這ってるっていうのに、どうして鳥は空を飛べるんだろうね?」