妄想たち
□step in to the air
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「せふな〜」
少し高めの声で、ものすごくつたない発音で俺の名を呼ぶのは・・
「レイヒョン」
ふんわりとした雰囲気はメンバー1で、笑みをたたえながら近寄ってくる姿はまるで天上人みたいだ。
「お待たせ。今日も、れんしゅうしてくれる?」
事務所内のレッスン場で、通常のダンスレッスンがあったが、中国メンバーで、まだまだ韓国語が不自由なレイとタオは韓国語のレッスンが組まれていた。
12人で活動が決まり、基本韓国の番組に出る時は通訳をつけないので、時々こうして別メニューが組まれている。
そして、その後に今日の復習を俺が教えるのが定例となりつつあった。
「もちろんです。あれ、タオは?」
「帰った。おれできるから〜だって」
「あー・・今日クリスヒョンと買い物行くっていってたな」
「俺は・・えーっと・・セフンと二人でうれしいです」
恥ずかしい事をつたない韓国語で、一生懸命話してくれる。俺は顔が赤くなってるのを知られたくなくてついついごまかす。
「・・レイヒョン、敬語になってますよ」
「あれ、ほんと?むずかしいね〜。あ、でもひとつカンペキに言えるのあるよ」
きょとんとしている俺の両肩に手を置いて、真面目な顔をして正面に立った。
「セフナ、サランへ」
その男前の顔がゆっくり微笑んだ。
自分の首から上がどんどん赤くなるのを感じていると
ガタンっ
大きな音をたててドアが開いた。
そこには苦虫をすりつぶしたような顔をしたタオが立っていた。
『レイ!!冗談でもそんなこと言うなよ』
中国語でなにか早口でまくしたてた。
なんという間で、なんていうやつに見られたんだとがっくりきていると、更にレイヒョンが追い打ちをかけた。
「冗談じゃない。本当にセフナを好き」
と韓国語で返すと、呆気にとられていた俺にひしっと抱きついた。
タオはそれこそ顎が外れるんじゃないかと思うぐらいあんぐり口を開けたまま固まった。
「セフナ、おこってる?」
そんなタオはほったらかしで、レイヒョンは垂れた眉でまるで捨て犬のような目で俺の顔を覗いた。
俺はただ黙ってなすがままだったけど、レイヒョンのその顔がかわいくて、更に困ってしまう。
「怒ってはないですけど・・」
と後ろのタオに目線をやると赤い顔してぷるぷると震えている様子が見えてしまった。
「俺が怒ってる〜〜!!」