妄想たち
□そうやってはじめよう
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大きなバンの中で静かな車内。
ベクは目をつむってはいるけど、恐らく寝ていない。
「ベク」
小さな声で呼びかけると、すぐに
目をうっすらとあけ
「なに?」
と答えた。
素直じゃないベクのことだから、正面から聞いたって絶対に誤魔化すのはわかっている。
でも・・・
「肩貸してやるよ。着いたら起こしてやるし」
せめてお前が安心できる場所を作りたい。
「なに、急に。めずらしー」
と疲れた顔で笑った。
抱きしめたくなる妙な衝動をぐっと抑えて。
「いいから、ほら」
ベクの頭の高さに肩を下げて椅子に腰掛け直した。
ベクは、ふ〜んと言いながら
「じゃ遠慮なく」
肩に重みが乗っかる。
ふわふわしたベクの髪の毛が顔をくすぐる。
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