Grab Our World〜光の七勇者〜


□第一章〜旅立つ〜 第二話-置かれた物-
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 抜けるように空は青く澄み渡り、波は何事もないことを象徴して穏やかに凪ぐシュザーズ海の縁に浮かぶ一つの島、ノーウェア島。

 その島にある一つの村、タツマイリ村。

 そこの外れにある丘の一軒家から、まるでニワトリのトサカのような形の金髪をした、十代に入ったばかりくらいの少年が出てきて郵便受けを目指し、歩いてくる。

 新聞が郵便受けの長さを超えているため、半開きになっているそこを開け、目当ての朝刊を取りだした時、下敷きになっていた一通の封筒が目に入った。

 同じ年頃の人間の字だろうか、お世辞にも上手いとは言えない筆記体で宛名に『Lucas』と書かれた封筒に、少年は少しだけ唇を上げた。

(ネスからだ……!)

 その手紙の送り主は、ネスからだった。

 ネスはかつてノーウェア島へ家族旅行に来て、年が近かったからか、意気投合して共に島を駆け巡った年上の友人だ。

 しかし、逆立ち気味の癖毛の金髪で寸胴の少年は何故か、家の周囲に人はいないことを注意深く執拗に確かめて一息を吐き、新聞を取りに行った時と同じ平然を装って戻る。

 黄と赤のストライプのTシャツを着ている彼は、わざと細い眉をひそめて新聞の一面を黒目がちの両目で読みつつ、家路を歩きながら手紙はポケットに入れた。

 玄関を開ければ、キッチンでコーヒーを注ぐテンガロンハットを被っているウエスタンファッションの父親が、唐突に話しかけてくる。

「リュカ、何か目新しい記事はあるのか」

「それは特にないけど、ネスから手紙が来た」

「そうか」
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