Grab Our World〜光の七勇者〜


□第一章〜旅立つ〜 第一話-つけられた物-
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 神の祝福を賜る喜びの賛歌と共に教会の鐘が鳴り響き、まだ見ぬ新天地を夢見て無数の白いハトが大空へ飛び立つ空の下。

 スマブラ大陸の北の方に位置するアヌクリア共和国で最も歴史があり、また、この国で一番に大きいヴィクエ教会の前の広場で、甲高い金属音が幾度も響く。

 音を鳴らすのは二人。

 うち一人は腕っ節や体格がよく、アヌクリア伝統の剣術の心得がある中年の男で、もう一人は十代後半ぐらいの若い女だった。

 若い女は、つむじ近くまで高くあげたポニーテールの金髪を腰まで流して、左手には鋼鉄作り独特の冷たさを帯びた長剣が、右手には同じ作りの短剣が握られている。

「もっと突っ込んで来い! 切っ先を向けろぉ! 襲いかかれフロローワァ!」

「もっかぁぁぁい! フェルナンデスゥ!」

 二人は剣術の訓練の最中のため、互いの剣が火花を散らして交わる時折、フェルナンデスと言う中年の男の厳しい叱咤とフロローワと言う女の威勢のいい覇気が飛び交い、激しさが空気を震わす。

 フロローワは、チーターが獲物に襲いかかるようにくびれた細い体躯で飛び上がり、攻撃の長剣をフェルナンデスの頭に素早く振り下ろす。

 フェルナンデスはフロローワを防御の短剣で左へ横薙ぎを放ち、彼女は体を転がされると悔しそうに左の紫の瞳で悔しそうに睨みつけ、細い眉を吊り上げる。

 たまらず今度はフロローワが体を屈めて、突進するかのように瞬時に飛び出し、長剣をフェルナンデスのみぞおちへ突き刺そうとする。

 高さ二m近くはある分厚い筋肉の壁としか見られない、屈強な師匠のフェルナンデスの懐にフロローワは直撃できた。

 と思えば、今度は右へ楽々と払われて、フロローワの黄金の生糸を束ねたようなポニーテールが風に舞う。

 フェルナンデスが睨みを利かせる。
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