Grab Our World〜光の七勇者〜


□第一章〜旅立つ〜 第三話-もらった物-
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 目を細めなければならないほどの日光の照り返しが、深緑の草原の瑞々しさを際立たせているそこに、涼やかな風が吹いて草は穏やかな波を打っている。

 まるで、青空に浸かって産まれたかのような真っ青な毛を体に持ち、楕円形の角をした珍しい山羊の群れが、ゆるゆると頭を振りながら若い草を恍惚な眼差しで食んでいる。

 そんな呑気にお食事中である山羊の集団の周囲を、筋骨隆々だがまだ初々しさが残っている金髪の青年が、瞳には優しさが見え隠れする茶色の馬に乗って回る。

 どこまでも広く果てしない大海風の双眼で、眼前の草原を銘々に見渡し、自分と馬と山羊と言う三色しか緑のキャンバスに置かれていないかと青年は監視を強める。

 青年は近くの村の牧童であり、村の牧場で飼われていて固有種である山羊たちに餌を与えるために、彼は村の外れの草原へ愛馬と共に来ている。

 左手で日を遮りながら空を見上げて太陽と時間の相談をして頷くと、何かに追われているような執拗さで辺りを隈無く見渡しながら、青年は馬を下りる。

 例えばオオカミなど家畜を襲う獣はいないかと確認していた先刻と、ちっとも変わっていないと青年は認識できれば、馬から離れて山羊たちへ一寸だけ歩く。

 青年は気を付けの姿勢で、目を瞑って俯く。

 すると、突如として王冠をかぶった女児のような影が青年の頭上に浮かび、その影の両手から黒い光を浴びせられる。

 そうすると、瞬く間に四つ足の獣へ青年の姿が変化した。

 まるで石の毛かと錯覚させるほどの黒みを帯びた緑色の剛毛には、所々に白い模様が入っていて、腹と胸、足の先端や後ろ足の付け根と尾っぽの裏側は真っ白だ。

 額には二重の白い菱形が描かれ、左の前足には過去に牢屋で閉じこめられていた時に繋がれていた枷と、千切れた鎖の一部がついているたくましいオオカミである。

 今の青年はオオカミの姿ではあるものの、深海のように青い目や左耳についた金の輪のピアスは、人の姿の彼を連想させる。
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