弾丸
□男勝り系女子と女子力高すぎる系男子
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「特訓に、付き合ってくれないかなぁ」
放課後、下駄箱に手紙という古典的な方法で呼び出されたアタシは現在目の前の小柄な少女にそんな誘いを受けている。
手を組み恥じらうその姿は正に女子。そんな奴が強くなりたいと言うのだから驚きである。お前は強くならなくても良いと思う。
「なんでアタシなんだよ?女子なら大神とか居るじゃねえか」
「えっとねぇ……こう、溢れ出る男気みたいなのが大和田さんにはあるから……」
「喧嘩売ってんのか、てめえ」
確かに女子力が欠如しているとは常々思っていたがこうもはっきりと言われても困る。しかしこんな小動物のような少女を殴る訳にもいかないので軽いデコピンを食らわす。
「特訓なぁ……」
結果が出るかは置いておいて、特訓に付き合うのは別に全然構わない。不二咲とも仲が悪いわけでもなく、普通に関係良好なクラスメートだ。何ならついでにアタシも女子力の特訓に付き合ってもらいたい程だ。
「だ、だめ……かなぁ」
ああ、しまった。一人で考えている内に、不二咲を涙目にしてしまった。しかし随分涙もろいな!焦ったアタシは、不二咲の頭をぐりんぐりんと撫で回す。
「だーっ!泣くな!」
強くなりたいんだろ?と聞けば不二咲は大きく頷いた。悔しいことに可愛いのだ、コレが。
「よし!しゃーねえから付き合ってやるよ」
「本当っ?良かったぁ」
ほっと胸を撫で下ろす仕草もまた女の子らしい。アタシには到底真似できない。
「でも何で突然強くなりたいなんて」
「…………うーん……」
指を口元に当て小首を傾げる仕草も以下略。ここまでしておいて無自覚というんだから恐ろしい。コイツは魔性の女と呼んで良いと思う。
「えっとね、自己嫌悪……かなぁ」
「はあ?」
「皆、強いのに……僕は……弱いから」
確かに不二咲はか弱いという単語が似合う。……が、弱いというのは違う気がする。しかしそれを言い表せず、アタシは一人でもだもだとした。
「何だろうな……!クッソ……」
「?」
そうして、首を傾げる不二咲を横目に、アタシはコイツの特訓に付き合うことになったのだ。