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□キミの心に奪われる---2
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・・・一体、なんだったのだろう。あの、感覚は・・・・。
翌日になり、朝練に向かうとき、やはり家が隣なので大体は花形と一緒の時間に家を出る。
そのときは一緒に行くようにしようとした。花形も、それを拒む事はしなかったし、別にいいと思った。
歩いているときも、他愛ない話が続く。
花形だと、それも面白くてすぐに駅についてしまった。
電車を待っていると、ホームにアナウンスが流れる。
「満員だな。やっぱり都会はすごいな」
花形がしみじみと言う。
中学の頃からこの満員電車を乗り続けているオレにとってその言葉は衝撃以外のなにものでもなかった。
満員でぎゅうぎゅうの電車の中に、大きい男と普通の男が乗り込む。狭そうだ。
「お前、この満員電車に乗ったことないのかよ」
「ああ、俺がいた中学はあまりサラリーマンとか通勤の人がここまで多くはなかったんだ。」
花形が上から喋る。ドア側に背中を押し付け、花形を見上げる。
いつも以上に花形が大きく見えた。満員なのに、オレのまわりだけ人がいない。
花形が壁になっているのだ。
「やっぱ大きいって、便利だな」
上から何もかも見渡せて。軽々とダンクが出来る。
身長が低い事でいいことなんて何もない。
けれど、花形にいった言葉は皮肉なんかじゃなくて、本心だった。
それは言った後に気付いた事だったが。
「そうだな。藤真もまだ伸びるだろ。一緒にでかくなろう」
笑いながら言う花形の言葉は、とても深い心情が読み取れた。
その心に、オレは癒されていく。
「身長だけじゃなく、バスケでもな」
にかっと笑って言ったオレは、今まで最高の笑みだった気がする。
友達にはじめてみせる、最高の笑顔。
お前だけだから、と心のどこかで決めて。