夢ならよかった

□ネコ科のヒト?
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私は恋をしたことがない



幼稚園児の頃に初恋を終えるおませさんとかいるけど大体の人が小学生や中学生の時期に初恋を終える



けど、私にはそれがない



だから、人を好きになるってことがどんな気持ちなのかもよく分からない





私は恋をせず高校1年を終えた



2年になって、どうせ1年のときと同じように時間が過ぎるのだろうと思っていた矢先のことだった




2年になって、1年の頃の友達と殆んどクラスが離れてしまった




「花梨、クラス離れちゃったねー」





『うん、』






見知った友達もいない




友達をつくるスキルだってない




自分から声を掛けることも出来ない





そんな思いを抱きながら、決められた席に座る




席順はどうやら名前の順ではないらしい




黒板に、先生が適当に決めた席順だって書いてあった




カタン




席に座ると、誰と話すでもなく前をただ見つめる




一見、何してるんだと思われるけど何かをしているわけではない



ボーッと時間が過ぎるのを待っているだけ




そんな私にも奇跡が降りてきた




「なぁ、」




声が聞こえたのは隣の席から




ゆっくり横を向くと、太陽みたいに明るく笑う男子がいた





『はい?何でしょう?』






「名前、何て言うの?」






『篠原花梨ですが』






「ふーん、篠原か…よろしくな」






声をかけてきた男子は何て言うか猫っぽい




というか、口の形がまんま猫だ




「ん?どうした?」




私の目線に気が付いたのか、俺の顔に何かついてる?と言ってくる




『いや、ネコ科のヒトなのかな?って思って…』






「ネコ科のヒト?ちょ、待って!せめて、ヒト科のネコにして!」





『え?』






「だってネコ主体ってことっしょ?口の形だけじゃなくて耳とか尻尾とか手とか足とか肉球あったりするってことじゃん?そうすると俺、かなり変態的な図になると思うんだけど…」





ふと、想像してみる



目の前の男子に猫耳と尻尾が生やされて肉球のある手で、にゃーんと猫の真似をしてる姿。




『結構似合うと思うけど…』





「え?!想像した?!」





『うん、結構可愛かったよ。』





「ほんとやめて!恥ずかしいから!っておい、水戸部笑うなよ!」





私の斜め後ろに座る彼、水戸部くん?は声こそ出さないけど口を抑えてプルプル震えている




「あーもー恥ずかしいー!あ、ごめん。名前言ってなかったな。俺、小金井慎二、よろしく」





『よろしく、小金井くん』





「で、こっちの震えてんのが水戸部。無口だけどいい奴だから。っていうか、いつまで笑ってんだよ」




ベシッと叩かれた彼は顔をあげてぺこり、とお辞儀した




ほんとに何も喋んないんだ…




「よろしく、だって」






『え?』





「水戸部が、よろしくだって。」





え、水戸部くん、喋ったっけ?





「あ、水戸部、喋んないんだけど、中学から一緒だから言いたいこと分かるんだよ。多分、今のは合ってると思う」






『多分って、くすくす』





小金井くんの後ろでこくん。と頷いてるからきっとそうなんだろう





「あ、そうだ。自分で言うのもなんだけど小金井って言いづらいだろ?コガでいいよ、皆そう呼んでるし」





『うん、分かった。コガ、ね。じゃあ私も、名前で呼んでくれると嬉しいな』





「分かった、花梨な」






『うん』





友達が出来るか、なんて要らない不安だった







20130727
 

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