時よ、戻れ
□両親が死んだ
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私の10回目の誕生日にそれは起きた
「綾も、もう10歳かー!」
「早いものねぇ。あ、そうだ…あなた。10歳になったんだし、今年のケーキはちょっと奮発しない?」
「いいねぇ、1/2成人式だもんな。ちょっと奮発するか!」
「綾、どこのケーキが食べたい?」
『お家のそばのいつものじゃなくてもいいの?』
「もちろんだよ。綾の好きなケーキ屋さんをパパとママに教えてごらん?」
『テレビでやってたラ・フォルテのいちごのケーキがいい!』
「ラ・フォルテってあの新しいお店か!ここから車で30分くらいだからさほど遠くもないし、今から行こうか。」
「そうね。綾、美智子叔母さんと仲良くお留守番しててね。」
『うんっ!パパ、ママ…いってらっしゃい!』
いつものでいいって、私も行くって言えばよかった
そしたら、あんなことにはならなかったのに…
ママとパパを送り出して、美智子叔母さんとお留守番して数時間後が経った
『ママとパパ、遅いね。』
「そうだね。道路が混んでるのかもしれないね。」
『早く帰ってくるといいね。』
「そうだね。綾ちゃん、ママたちが帰ってくるまでお昼寝しよっか。」
『うん。』
美智子叔母さんの言葉で私の記憶はここまでしかない。
その後、家に警察から1本の電話が入りママとパパの車が事故に遭ったと知らされた
正面衝突で、即死だったらしい
車の後ろには綺麗にデコレーションされたワンホールのショートケーキが潰れて置いてあったという
この時は、美智子叔母さんも混乱していてその事実は私の耳には届いていなかった
『みっちゃん…?』
昼寝から目覚めた私が最初に見たのは泣き崩れた美智子叔母さんだった
「ううっ…ひぐっ…」
『みっちゃん、大丈夫?』
「綾ちゃん…っ…」
『どっか痛いの?』
「綾ちゃん、よく聞いて。ママとパパがね、死んじゃったの…っく…」
『え?』
「ママとパパ…ケーキ買った帰りにね、ママたちが乗った車が事故に遭ったの。」
『嘘…道路が混んでるだけだよね?』
「さっき、警察の人から電話が来てね…ママとパパはお空に行きましたって連絡があったの。」
『そんなの嘘だよ!パパもママもケーキ買ってお祝いしようね!って約束してくれたもん!』
「綾ちゃん…。残念だけど…」
『うっ、うわぁあん!帰ってきてよ!うわぁあん!』
美智子叔母さんから事実を聞くと私は堰が切れたように泣き出した
私のせいだ
私が我が儘言ったからパパとママは死んでしまったんだ
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