愛という偽りを
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01.
『たっだいまぁー…疲れた…』
実家通いで働くあたしは、仙台一という銀行に勤めている
何故、銀行か?
答えは簡単。皆みたいに実家が何屋さんとかではないから継ぐことも出来ない。
『きょーちゃんに会いたいよぉ…』
スーツのままソファに寝転んで愛しの妹の名を呟く
「ただいま…。何?スーツのまま寝転んでるの?皺になるよ、スーツ」
辛辣な言葉を返す妹が好き過ぎるあたし
『きょーちゃぁん!』
ガバッと起き上がって抱き締めようとすると、華麗にかわされた
「疲れてるのに、そういうのやめてよ」
『可愛いきょーちゃんで充電しよーと思ったのにぃー』
「五月蝿いから充電しなくていいよ」
『酷い!でも、そんなきょーちゃんが好き!』
「あっそ」
『きょーちゃん…好きな人でも出来たのー?』
「何でそんなこと聞くの?」
『いつもより黙れ感半端ないんだもん』
「出来てないけど、ていうかそれいつも通りだから。お姉ちゃんの気のせい」
『そっかー、よかったぁー!きょーちゃんに彼氏なんてお母さんが許してもあたしは許さないよー』
「お姉ちゃんは人の心配してないで自分の結婚相手見つけなよ」
『それ禁句…』
三十路になる前には結婚しないとヤバいのは銀行内での同僚同士の会話からも十分すぎるほどよく分かる
でもね、お姉ちゃんには相手がいないの
彼氏なんて高校の時の繋心が最後だよ。その後に次ぐ人がひとりとしていないの!悲しすぎるでしょ?
友達は彼氏がいたり、結婚まで辿り着いていたりとあたしとは縁のない幸せな時間を過ごしてるんだっていうんだから世の中は不公平だなぁって余計に感じる
「もう烏養コーチでいいじゃない」
『何言ってんの?アイツ彼女いたし、結婚してるんじゃないかな?っていうか、え?コーチ?コーチしてんの?』
「結婚してないと思うよ。ていうか、コーチしてるの知らなかったの?」
『知らないよ!連絡なんて取ってないし、最後に会ったのなんて同窓会を知らせにいった時だよ?!あたし大学生!』
「それじゃ、知らないはずだね」
『バレーからあんだけ離れてたのにコーチとか出来るんだ…』
「この間、嶋田さんたちと勝負したよ」
『嶋っちと?!あ、もしかして町内会のバレーチーム?』
「そうみたい。お姉ちゃんは元気か?って聞かれた。あの人、私のお姉ちゃんってこと知ってたんだね…。」
『昔、きょーちゃんと撮ったプリ送り付けて妹いるんだよ!って自慢したからかも…』
「プリ?いつの?」
『多分、きょーちゃんが小学生んときかなー…?』
「小学生?それでよく分かったね、あの人」
『高校の入学式ん時と烏野バレー部のジャージ届いてからも記念に!って撮ったじゃん?それ毎回嶋っちに送ってたからねー』
「馬鹿」
『あれ?きょーちゃん拗ねちゃった?』
「馬鹿のすることなんて気にしてないわよ」
『あら、辛辣。でもそうだねぇ、最近会ってないから会いに行きたいねー…。』
「じゃあ、今度の休みに烏野に来なよ。東京の学校と練習試合するんだって。」
『嶋っちも来るって?』
「烏養コーチの指導はどんなもんだって見に来るんじゃない?」
『じゃあ、行ってもいい。』
「素直じゃない上に上から目線よね。」
『アイツは、もう嫌いなの。きょーちゃんが手を出されてないか視察に行くだけなんだから…』
「はいはい」
『夕方でいいの?』
「うん。まぁ、そんくらいかな」
『楽しみにしてるね』
「…うん。素直じゃないなー。」
『…うっさい。』
20150202