原石と化け物。
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07.噂の鋏番長
『真ちゃん、赤司ってどんな人?』
「一言で言えば、逆らったら自分が死ぬ羽目になるということなのだよ」
『全然分かんないんだけど!他は?他はないの?テツやん!』
「僕ですか…っていうか、テツやんって何なんですか」
『いつまでも黒子くんだなんて、友達っぽくないじゃん!だから、テツやん!可愛いっしょ?!』
「まぁ、いいでしょう。それで、赤司くんのことでしたよね」
『あーうん』
「高梨さんはどこまで知ってますか?」
『あ、えっとね、常に鋏を持ってて目の色おかしくて、気が狂ったよーな人だったと思う!あとね、皆は恐れてるのにむっくんだけ懐いてるっていう謎があるってことだけかな…』
「まず、そこから正しましょうか。常に鋏を持っている訳ではありません。気が狂っているときもありますが、大体は普通の人です。僕の次くらいに常識的な人かと思います。」
『え?そうなの?』
「紫原くんだけではありません。僕たち皆が赤司くんを慕っています」
『脅されてるんじゃないの?』
「いえ、全然」
『あーあの人か!あたしを1軍マネージャーに引き上げた人!』
「他に誰だと思ってたんですか」
『え?顧問の先生』
「馬鹿なんですね、高梨さんって」
『酷いよ!テツやん』
「間違ってはいないだろう」
『うるせーよ、眼鏡』
「全国の眼鏡をかけている人に謝ってください」
『さーせん』
「反省の色が見えないのだよ!」
『反省の色って何色だ、バカ野郎。そもそも反省なんてする気ねーもん』
「話を戻しますね。というか、何故今更、赤司くんのことを聞きたがったんですか?結構有名だと思うんですけど 」
『見たことないから。噂がどこまで合ってんのか知らないし、それで人を決めつけんのはいい気がしないじゃん』
「意外と良い子なんですね、高梨さん」
『あたしが変な噂されてた張本人だしねー。人柄ってのもあるかもしれないけどあの噂を聞いて離れていった人もいるわけだし。それで嫌な思いしたわけだから同じことを他の人にはしたくないじゃん?』
「気にしているのだな」
『そりゃあねー。昨年さ、バスケゴールの下で遊んでた人にそれ、明日には落ちるよってちゃんと言ったのに怪我して欲しくて呪ったとか根も葉もないこと言われてさー。友達なんていなかったんだよ?あたし。』
「そういえばそうでした。それで高梨さんを見ていた赤司くんが1軍のマネージャーに引き上げたんでした。」
『そうだよ!疑問だったんだよねー。変な噂されてんのに何で引き上げたのかなーって。皆は色目使ったって言ってるけどあたしにはそんな色目ないしねー、さっちゃんじゃあるまいし』
「それはないのだよ」
『分かってるよ。だから今言ったじゃねーか。なんか真ちゃんに言われると腹立つわー』
「普通に分かるじゃないですか。どれくらいのガタがきてるとか普通に見ただけじゃ分かりません。よく観察しているからこそ、いつ落ちる。そこまで分かるんじゃないですか。それが、当たったとなるとそれをバスケ部で生かす他なくなるんです。赤司くんはそれを狙っていたんです。」
『観察力?それなら分析力ともに、さっちゃんの方が上でしょ』
「予想というのは想像と同じです」
『想像…?』
「観察して予想した結果、あの古びたゴールは莉卯さんの予想通り次の日に落ちたんです。例えば、ある選手がどの才能に長けているかを観察してある能力を足すとこうなる。そういう想像という予想をすることでチームの強みになるっていうことです」
『でもそれって、その予想に対応する人材じゃないとあたしの予想は意味ないんじゃない?』
「そのための僕らでしょう」
『あーなるほど。ていうかテツやん。さっきあたしのこと名前で呼んだ?』
「あ、」
『ん?』
「無意識でした。すみません」
『いや、謝らなくていいけどさ。それってあたしも友達と思ってもらったってことでいいんだよね?』
「それは…まぁ、そうなりますね 」
『やった!ね、テツやん。そう考えるとさ、赤司くんって頭いいんだね。勘じゃなくてちゃんと理屈があってさ。』
「理屈のように聞こえますが分かりやすく言っただけですよ。なので、直感で引き上げたって言っても過言ではありません」
『え?そうなの?』
「はい。」
『すっごい失礼かもしれないけど、赤司くんと話してみたくなっちゃった。真意とか聞いてみたいんだよね。あたしを引き上げた本当の意味とか。』
「ないと思いますけどね。」
『そうかな?あたしはあると思うよ。あ、次さとるんの授業じゃん!遅刻するとうっさいんだよねー。急ごうテツやん、真ちゃ…って!何1人で行こうとしてんだよ!クソ眼鏡!』
「口が悪いのだよ!」
『100パーお前のせいだよ。行こう、テツやん』
これはある日の昼下がりのこと
20131226