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□frater...op.0.
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 母親が気付いて、止めたから良かったものの、あのままになっていたらどうなっていたのだろう……
 想像するに耐えない。
 ……自分が、あの娘を守ってやんなきゃいけない……
 そう思っても、書類上の関係の妹だ。どうなろうと知った事ではない。
 唯、肉親同士でどうこうしているのを見て見ぬふりをするのは、金輪際したくない。
 そう思っている間にも、何しでかすか、解ったものでも無い。
 どうすれば良い……
 今までの自分の人生の中で唯一、焦った事柄だった。



 それから暫く経って、子供の父親に子供には触れるなと言われ、自分を子供から隔離した。
 監視していたのが解ったんだな……と、思った。
 あの事件以降、夫婦の間に亀裂でも入ったのか、冷めきっている。
 子供は、子供の母親の言い付けで自分が見ていた。
 子供の父親は、それも良しとしなかったのだろう。
 だが、当然子供は自分の後ばかり付いて行く。
 父親は何度も離そうとするが、どうしようとくっついて行く。
 これは都合良かった。
「にぃ……にぃ……」
 夫婦の子供の兄、ましてや夫婦の子供という位置にすら自分は居ない。
 強いて言えば、24時間無休のこの子供の専属sitter……と言った処か……
 それなのに何処で覚えたのか、子供は自分の事を『兄』と言って来る。
「だっこぉ。」
 その言葉、何処で覚えたんだ?
 自分を必要としているその手には、ちゃんと色が付いている。
 今まで何を見てきたのだろう。
 ……あぁ、そうか……
 何も見ようとはしてなかったんだ……
 その小さな手で、澱から引っ張り出されるとは思ってもいなかった。
 今まで、抱っこは一度もした事が無い。
 拒否する理由は無いので、その身体を怖々と持ち上げる。
 きゃっきゃっ、と嬉しそうな声を上げ、腕と脚をばたつかせる。
「うわぁっ、ダメだって、暴れるなってば……」
 背中を軽くぽんぽんと叩くと動きは落ち着き、シャツをぐっと掴まれ、寝てしまった。
 書類上のみの『妹』に触れたのは、それが最初だった。



 妹に触れたその日、妹の父親に殴られた。
 この時ばかりは母親もかばってくれたが、父親は自分を殴らなきゃ気が済まないだろう。
 母親が殴られないように動きも見ながら、殴らせた。



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