オリジナル


□murmur_mummer.05
2ページ/5ページ




 落雷。


「なぁにやってんだーっ!」
 ねぇちゃんの雷が落ちた。
 厩に行くまでにかなり絡まり、複雑に入り組んだ銀色の髪は、既に手の付けようが無い。
 うぁっ……
 火に油を注いだようだ。
 銀色は自分がぶら下がるようになってしまったので、腕に抱え、困っている。
「……銀の字よ……」
 息を一つ、ゆっくりと吐き、
「切るか。」
と言って、蹄を切る鋏を取り出した。
 首を横に振る銀色。
「お前に初めて会った時から、邪魔くせぇって思ってたんだよ……ほら、面(つら)貸せ!」
 怒髪、天を衝いている様子のねぇちゃん。
「あ……ねぇちゃん……」
 自分はと言うと、既に狼狽える事しか出来ない。
「じっとしとけ。思ったよりも短くなるぞ。」
 問答無用に髪を切っていく。此方から見える、鋏の鈍い光。
 銀色の自分を抱える腕が、震えているのに気が付いた。
「銀色……?」
 少しばかり察しが付き、銀色に声を掛ける。
 ねぇちゃんは怒った様子というよりも、真剣味を帯びた様子で銀色の髪を切っていく。
 銀色の銀髪が、自分の身体に降りてくる。まだ、生温かい。
「……大丈夫……別に、殺しはしねぇって……。」
 銀色に静かに話し掛ける。
「……ほら、これで大丈夫だ……」
 鋏を下ろしたねぇちゃん。銀色の全体をゆっくりと見ると、然程(さほど)変わった様子が見られない。
「あーっ……やっぱり人間の髪は違うなぁー!」
 女なのに豪快な笑い声を上げ、自分に付いた銀色の髪を軽く払い、厩から出ていった。
 白百合が納得したように、鼻を鳴らす。
 銀色がゆっくりと自分を降ろすと、髪がすんなりと解け、銀色の髪も下に落ち、刺さる感覚も無い。
 意外な特技もあるものだ……と銀色と顔を見合わせつつ、うんうんと頷いた。
 
 
 


ブログを書くだけ
1記事で5万円!?

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ