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□murmur_mummer.02
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畑。
夥(おびただ)しい数の獣の足跡。
「あぁ……」
掘り返され、囓られた野菜を手に取る。
夜の間に荒らされたようだ。
「やられちまった……」
困ったなぁと言うと、銀色はすっくと立ち上がり、辺りの土を掘り返していく。
「おい……」
止めようと腕を伸ばした瞬間、無事な芋を目の前に突き出された。
「うん、うん……そうだな。探せば在ると思うが……」
銀色は次々と掘り返していく。
「まぁ……良いか。残り少ないし……」
自分も砂のような水捌けの良い土の中から芋を掘り出していった。
籠。
大半が喰われていたので、それらは土に埋め返しておく。次の年の肥料にする為だ。
それでも自分と銀色の籠、それぞれ半分ずつになり、以前収穫したのと合わせると、今年の収穫量は上々だったと言えそうだ。
「もう一か所在るんだが、大丈夫か?」
銀色がうんうんと頷くのを見て、籠を背負う。
「よしっ、じゃあ行くか……」
と、歩を進めようとしたのを肩を掴まれ、止められた。
「どうした?」
斜め上の銀色の表情は暗くなっている。
「……ん?」
風が変わる。
何かの足音が近付く。
一体だけでなく、何体もの足音。
地面を爪で蹴る音。
黒い影が見えた。
獣の感覚。
「不味っ……」
言葉が飛んだ。
地面が一瞬で遠ざかる。
獣共が自分の居た処で狼狽(うろた)え、此方を見上げる。
「うわあぁぁっ!」
宙を舞っているのだ。
銀色が自分を抱え、何処にそんな脚力が在るのか解らないが、いとも容易く木の幹に飛び乗った。
今は、自分を抱えていたのを木の幹に降ろし、にやにやと獣共を見下ろしている。
「お前は、」
言葉を続けようとした瞬間、馬の嘶(いなな)く声が響き渡った。
Dropeyes