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□murmur_mummer.01
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 夜。

 家までの畦道(あぜみち)をひたすら歩く。
 あぁ……夜になっちまった……
 月がいよいよ明るくなる。
 足音が2つ。
「付いて来んなよっ!」
 立ち止まり、振り返る。
 銀髪もその場に立ち止まり、振り返る。
「お前だよ!お前ーっ!何、自分じゃない感じに持って行こうとすんだよ!」
 銀髪が自分に向かって首を傾げている。
「もう、来んな。そこで止まれ。」
 そう言うと家の方を向き、全力で走った。
 それでも足音は2つ。
「そっ……そうやって、家まで付いて来る気かよ……」
 立ち止まり、息を弾ませつつ、がくりとうなだれる。
「あのさぁ……」
 顔を上げる。
 銀髪が居ない。
「あ、あれ?」
 後ろから気配がする。
 振り返ると銀髪がすぐ側に居た。
「うぎゃっ!」
 後退りしようと手足をばたつかせるが、銀髪にすぐさま自分の腕を捕られた。
「うあぁっ!うぅっ……」
 情け無い声を出してしまう。
「な……なにっ、何がっ、したいんだっ!」
 右腕がゆっくりと動く。
「な、何っ!」
 右手に在る芋をゆっくりと差し出す。
「それは、お前にやるって言ったじゃねーか!」
 必死で腕を引っ張るが、矢張りビクともしない。
 銀髪は片手に持った芋をぽいっと放る。
 それは抛物線(ほうぶつせん)を描き、籠の中に収まった。
 それと同時に、腕を掴む手が離れた。
「それがしたかっただけかよーっ!」
 銀髪はコクリと頷く。
 かなり満足そうだ。
「口で言えよ!」
 首をゆっくりと振る。
「あ、唖(おし)か……」
 頭を抱える。
「……もう、構ってる暇は無ぇんだ。帰り路は解ってん……あれ?」
 顔を上げると既に銀髪は居なくなっていた。
 ……本気で満足したんだな……ま、いっか……
 何事も無かったように家路に就いた。
 
 
 
 
 
【コージコーナー】

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