二次創作


□:Word.
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 チョークの匂いで、僕は『学生』だと再認識した。
 此処が全ての現実で在れば善いと、ふと思っては窓の外の空を見る。


立派な表紙を開く。
無作為に広げた頁には言葉が並ぶ。
殆ど、知らない言葉だ。多分それは死ぬまで知らない言葉だ。

 この本には、僕が知らなくても困る事の無い言葉が並ぶ。


唯、この教室にはこの言葉を知りたい人が居るのかも知れない。
唯、この世界にはこの言葉を知りたい人が居るのかも知れない。
僕が無用の長物だと思っていたものが、誰かの役に立っている……。

 少し、羨ましく思った。



:Word.




「言葉?」
『そう。』
「余り好きじゃない。」
『何故?』
「頼りなくて……」
 まるで僕の様で
『なら、言葉は要らないわね』
 彼女の眼が真直ぐで、言葉を巧く返せなかった。



棚引く雲。
碧空。
風が戦ぐ。
世界は平和を取り戻したいと言う。



 走る。
 この時間だけ、世界が僕を必要としている時間。


 ずっと嫌だった。
 僕は逃げてばっかりだ。
 現実から抜け出したかったけど結局何も好転せず、時間だけが過ぎて行って終うから、この状況に唯唯飲み込まれている。
『アンタさぁ、それって単に逃げてるだけじゃない』
「それは、解らない。」
『はぁ〜っ、その優柔不断さが嫌いなのよ!』
 そう強い口調で言う彼女は、他人に自分の弱さを見せたく無いらしい。



 ふと、一瞬だけ遠くに見えた赤い煌めき。
 ソレは僕らの敵。


何かの本にあった言葉を思い出す。"赤は生命の色であり、死の色である。"


 目の前に在るのは間違い無く死の色だ。
 それを掴み、一気に潰した。

 返り血。

 奴等には血も涙も無いと思って居たのに。



『生きて居たのね』

 大人しい彼女の聲を脳裏で聴く度にもどかしい思いが過る。
 多分、一番もどかしく想って居るのは彼女だ。




雲が流れる。
白雲。
風が止む。
世界が僕を置き去りにする。



 止まる。
 この時間だけ、僕の生きた心地がしない時間。


 ずっと嫌だった。
 逃げては駄目だと思っていたけれど、結局逃げてる様に見られて居る。
 それでも、僕だって皆と同じく闘って居るんだ。



誰よりも僕らは闘って居る。
そして誰よりも、この苦しい状況の真っ直中に生きて居る。
 そう思うと何だか遣り切れない。
 世界は本当に僕らだけの力で平和になるのか?
 多分、誰もその答を言ってはくれないし、多分、その答を知る人も居ない。


 解って居る事は、僕らはまだ生きていなきゃいけないって事。


 瞳を閉じ、再び開けた時、全てが夢で在って欲しいと思う。


全てがまるで
幼い時に見た
悪い夢で
在れば善い





人も街も空気も自然も未来も、
元の存在した処に、元の状態のまま、
ごく普通に在ったら善いのに……





『全て、元通りになったら善いの?』
「望んで居るだけだよ」
『それは叶うの?』
「解らない」
『じゃあ、叶えるの』
「無理さ。」
『望むだけでは何も始まらない』
「無理だよ。」
『臨んで行かなきゃ何も掴めない』
無理なんだよ。
僕には。





近付いて居るのは君か?
離して居るのは僕か?
誰の言う事を訊けば善い?
誰の言う事も無視しなければならない?
それは正しいのか?
悪い事なのか?
判断するのは大人か?
それに足る大人は誰?
それとも僕自身で判断するの?
どうすれば善い?

どうすれば……
 
 
 
 
 
なぜかハマル!
パズルゲーム!!

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