オリジナル


□murmur_mummer.03
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 朝焼け。


 眼を醒まし、まず天井が違う事に気付いた。
「起きろ!」
 ねぇちゃんは雨戸を開けている。朝の日差しが入る。
 眩しい……
 もう少し寝かせて欲しいけど、ねぇちゃんは何も言わずにさっさと行ってしまった。
 何度か寝返りを打つが、眠りに付く事は無い。
 やけに外が明るい所為だ。
 上体を起こす。
「銀色……?」
 布団を蹴散らかし、身体が有り得ない場所にある銀色は、手脚を広げ、良く眠っている。
 叩き起こしても起きない。
 仕方なく起き、綿入れを着つつ、居間を通る。
 ばぁちゃんは既に定位置に座って、灰を舞い上がらせている。
 草履を履き外へ行くと、空から何か舞い降りて来る。
 雪だ。
 変に空が明るく感じたのは、雪雲の所為だったらしい。
 ずっと見上げる。風が無く、穏やかに降り続く。
 ねぇちゃんの言う事は確実に当る。
 綿入れをぎゅっと握り締める。寒い。
 吐いた息が白く凍る。
 蹄の音が遠くで響く。
 矢が的に当る音。清々しい程良く響く。
 手水鉢の水は凍っていた。



 日課。


 畑に行けないのは、どうにも歯痒い。
 芋の収穫は終わった。葱と白菜はどうなったか……。
 この雪で凍みてしまっただろう。また次の年の肥やしにして終おうか……。
 じぃちゃんとばぁちゃんにねぇちゃんが作った朝餉を持って行く。
 銀色は、また狐のお面を見ていた。
 
 
 


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