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□murmur_mummer.02
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 朝。


 布団からゆっくりと出る。
 寒さで縮こまりながら着替える。服の冷たさが徐々に肌を這っていくのを、服の上から擦りながら耐えた。
 顔を洗う為、外に出る。
 朝靄(あさもや)が一帯に掛かっており、近くの山も浮かんでいるように見える。
 玄関のすぐ側に在る手水(ちょうず)鉢に近付き、蓋を開け、柄杓で中の水を掬う。
 水滴が落ち、水面に跳ねる音でさえ冷たさを覚える。
 掌に柄杓の水を恐る恐る流す。
「うぅっ!」
 一気に顔を洗う。
「ぅ……くぁ……」
 急いで木綿の手拭いで顔を覆う。手や顔の水滴が空気に触れると、当然の事ながら、冷たさが増す。
 家の中を見ると、身体を丸め、白河夜船の銀色。
 ……野郎……
 少し癪に触ったので、静かに銀色に近付き、持っていた空の柄杓でそいつのでこを軽く叩く。
 カコン!
 良い音がする。
 カコン!
 中々起きねぇな……
 スッと柄杓を振り降ろした瞬間、それを取り上げられた。
「起きてんなら、起きろよ。」
 変な言葉だな、と思いつつ「柄杓、返せ」と続けると、銀色は唇を不服そうに曲げつつ返した。



 山道。


 早朝に畑に行くのは久し振りの事だ。
 じぃさんが生きてた頃は、いっつも行ってたんだけどなぁ……
 獣が多く、一人ではどうにも太刀打ち出来ず、困っていた。
 コイツ、こう言う時には役立つなぁ……
 意気揚々と歩いていると、後ろを歩いていた銀色が急に隣りを歩き出し、腕を取られた。
「はぁっ……」
 やっぱり駄目か……
「怖いのか?」
 首を横に振る。
「何だ?」
 大層、綿の入った着物を着ている癖に身体が震えている。
「……寒いのか?」
 ゆっくり頷く。
「戻るか?」
 首を横に振る。
「……全く面倒くせぇな……」
 抱え込まれた腕を擦ってやりつつ、畑へと向かった。
 
 
 
 
 
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