かざぐるま

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スモーカーは、本部の自室にて新聞を眺めていた。その傍らには部下のたしぎが横で書類をまとめている。

「…ハッ、海賊め…」
「どうしたんですか?急に」
「……海賊による空軍基地の襲撃記事を見つけた」
「…でも不思議です、なぜ空軍を狙うのでしょう…」
「第8と第2が完全に壊滅させられた。…しかもかなりの殺害事実もある」
「これ以上を、海賊を野放しにしてはいけませんね」

スモーカーは、額に青筋を浮かべて新聞を握りしめていた。

「最近新しく懸けられた賞金首の手配書です」

たしぎがスモーカーに数枚の手配書を差しだした。
占める大半が海賊なのだが、スモーカーは徐に手に取り手配書を見ると

「………これは」
「……はい?」

スモーカーが一枚の手配書で手を止めた。
あまり良く目を通して居なかったのか、たしぎがスモーカーの手の中にある手配書を覗き込んだ。

「……この子、」
「…間違いねぇ、あのふざけた小娘だ」
「ま、窓から侵入してきた女の子ですか!?」
「あぁ、空軍の生意気なガキだ」

スモーカーは、当時思い切りバカにされて屈辱を受けた事を思い出し、葉巻を噛みしめた。

「犯罪者だったんですか…」
「一億…だと?」
「やはりあの時始末するべきでしたね…」
「…お前じゃあのガキに勝てねぇよ」
「!!」
「……ベイビーゴール、か……やはり偽名だったか」

すると、部屋に突然と青雉が入ってきた。

「あらら、調べ事?」
「た、大将!?」
「………一体、何の御用で」
「いやぁー、ただ暇だったから」
「そういって大将、またサボりに来たのでしょう!?」
「あれ、バレちゃった?」
「バレバレです!!」

青雉がスモーカーの机に近寄り、スモーカーの手に握られていた手配書を軽々と奪うと、目に通す。

「んー、やっぱラビットちゃんは可愛いね!」
「……」
「大人でも無く子供でも無くの、この子のフェロモンが溜まんないよね」
「……ロリコン」
「違いますぅー」
「…呆れてモノも言えねぇ」
「堅いなァスモーカーは」

その手配書を持ち、「部屋に飾ろう」と言って去ろうとする青雉を、たしぎが止める。
そしてその去り際に、スモーカーが声を掛けた。

「……その女は、何者だ?」
「……」
「気になる点が山ほどあるんだ」
「…ラビットちゃんの?」
「まず、こいつは何をしてこんな懸賞金が懸けられているのかと…、あんたと顔馴染みの理由だ」
「何をしたってそりゃあ、この子が空軍基地を襲った張本人だからさ」
「!!?」
「…何だと、!」
「あ、……言ってよかったんだっけ」
「今のは……どういう事だ」
「…だって、…だって新聞には、」
「あぁ、海賊の所為にされているな」
「…それは、立派な“隠蔽”じゃないのか」
「確かに隠蔽だねぇ、でも指示したのは政府のお偉いさんな訳。おれ達にはどうにも出来ねェんだよ」

たしぎもスモーカーも、納得のいかない様な顔をして青雉を見ていた。

「…隠蔽している癖に、手配書を作成したってのか」
「んな事知らねぇよ?政府の人達がそうしてんだから」

スモーカーは、苛立ちに葉巻を灰皿に押し潰し、ラビットの写った手配書をもう一度見直してから、握りしめた。

「あ、口外しないでね」

スモーカーは立ち上がり、十手を持つと部屋から出ようとする。

「どこ行くんですか、スモーカーさん」
「たしぎ、此処から一番近い空軍基地を調べろ」
「…おいおい、まさか行くのか?」

そして、振り返って青雉を睨むと

「空軍基地が滅ぼされてんのは“海賊”の仕業なんだろ?」
「……ん、…あの子を殺る気…?」
「海賊がオイタしたら、成敗するのが海軍でしょうよ」

その言葉に、たしぎも青雉も顔をあげる。

「わ、わかりました今すぐに調べてきます!」

そういうと、たしぎとスモーカーは部屋から出て行った。

そしてその様子を、青雉は見つめていた。









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