あくまガール

□じゅう!
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「サキュバスさん!!世経新聞です!」
「ちょっとお話お伺いできますか!」
「アー!可愛い!こっち向いて!」


フラッシュがチカチカと眩しい!
しまった、囲まれた!!


今日はクラッカーちゃんとお仕事で
とある国に来たんだけど、来島して早々
新聞社とか週刊誌とか雑誌とかエトセトラ…
色んな人が沢山群がってきて大変!

山盛りモリモリの名刺を全部谷間にしまい込んだのは良いものの、こんなにワタシの前に人が集まってくるのは初めてなので、ちょっと戸惑ってしまう。

隣に居た鎧クラッカーちゃんも
流石にドン引きしてる。


「退け。貴様ら誰に許可を得て…」
「わー!?これはこれはビッグマム海賊団幹部にして四将星が一人、シャーロット・クラッカー様ですね!?」
「かっこいいー!ア!こっち向いて!」
「四皇幹部初めて見ました!!素敵ー!」
「…な、なんだ!」
『何嬉しそうにしてるのよ!』
「ぐ…ならお前がコイツらどうにかしろ」
『こう言うのはもっとバシッと言わなきゃダメなのよ!』
「だったら早くやれ」


大きく息を吸い、ワタシが言葉を発するのを今か今かと待つ記者やライター達に大きな声を出した。


『こらーーー!貴方達ーーー!!もっと可愛くセクシーに写真を撮れーー!!!』
「言う事がそれか…」
『あとワタシの記事で稼いだ売上金の5割はよこせーーー!!!』
「「「おぉ…!」」」


おぉ……じゃないわよ!
何バシャバシャ写真撮ってんの!
でもこれで日頃から溜まってた新聞社達に対する鬱憤を吐き出せた!あ〜スッキリ!


「埒があかん。行くぞ」
『え、ちょっと待っ…』
「ああ!待ってください!!」
「お話を!」
「美の秘訣を!」
「写真集のお話を!」
『あ〜〜〜れ〜〜〜〜〜』


スタコラサッサとエスケープ!
クラッカーちゃんの大きな手が群衆を振り払い
ワタシの首根っこを掴んでその場から逃走した。





「はぁ…行く先々でパパラッチに遭遇するのはいい加減迷惑だ」
『ワタシが魅力的なのが悪いよね…ごめん…』
「……あぁ言えばこう言うなお前は」
『あ!そうだ、ねぇねぇ』
「なんだ」
『お仕事終わったらさ、デートしようよ!』
「……デート?」
『そう!なんてったってこの島は“夜遊び”が有名!色んなクラブやカジノや酒場があるんだよ〜!!』
「行かない」
『じゃあいいよ〜だ』
「………一人で行くのか?」
『だって来てくれないんでしょ?』
「……………」
『って事で、今日は朝まで帰らないから!』
「…分かった」
『ヨシ!じゃあ早速お仕事…』
「おれも行く」
『ええ?』
「…なんだ、不服か?」
『んーん♡嬉しいな♡』
「お前がハメ外し過ぎない様に監視するだけだよ」
『え?ハメまくりたい!?』
「言ってないッ!」


照れ屋でツンデレクラッカーさま♡
今日も可愛くて最高だね♡
って言うと鼻つまんでくるから言わない。


お仕事もとっても簡単ですぐ終わった。
クラッカーちゃんは貢ぎ物のお菓子を回収して
ワタシは別行動でとある貴族様を捕まえて精子工場すっからかんにしてやった!えっへん。
そして貴族様が闇市で競り落とした悪魔の実の隠し場所を聞き出し、ワタシはそれを持ってフワフワ帰宅中!


けど…その途中で
ガラの悪い人達に絡まれちゃった。


『あーもーしつこーーい!』
「いいじゃねぇか!ちょっと付き合えって」
「あんまり抵抗すると痛い事しちゃうよ〜」
「何を大事そうに抱えてんのか知らねぇが、そんなもん放って俺らと遊ぼうぜ」
『やだよ〜くさい〜!』
「臭くねぇし!」
『くさくさ!香水激クサプンプン丸め!』
「舐めてんのかこの女…!」
「噂のサキュバスを売り飛ばせば、相当儲かるんじゃねェか!?」
「いいなそれ!!やっちまおう!」
『ワタシ綺麗だし50兆くらいは行くかな!?』
「何言ってんだテメェ!?」
「なんでこの状況でビビらねぇんだ!!」
『怖くないからよ!』


もう!悪魔の実って言う大事な荷物持ってんのに、こんな不潔男達に囲まれちゃうなんて!
今日は色んな人に囲まれるわね。
ワタシを見るなり色んな人がジロジロ見てきたり声掛けてきたり捕まえようとしてくるけど、ワタシ今仕事中なんだから!

それにビッグマム海賊団が欲しがる悪魔の実なんて、失くしたりしたらとんでもない事になりそうなのに。
あーあ、ツイてないわ。


『ウギャーーー!?』


斬られた!?
信じらんない!
こいつら調子に乗って…
ワタシの美肌に傷付けるなんて…!!

肩から血が止まらない。
今怒ってるから痛みはあんまり感じないけど、これ結構深くやられたかも。


『ちょっとあんたねぇ!ワタシ今大きな荷物持ってて手が塞がってるの!!なのに刃物向けるなんて…!!』
「言うこと聞かないからだぜ」
「もうまどろっこしいし、さっさと攫っちまおう」
『だれを攫うってぇええ!?』


「よう、楽しそうだな」


不意に後ろから聞こえた声に振り向くと
そこに立ってたのは


『あれ?クラッ…ゥブェッ』


鎧…じゃなくて本体のクラッカーちゃん。
名前を呼ぶ前に頬っぺたを掴まれた。

そうだそうだ、そうだった。
この人普段は鎧で滅多に他人に本体を見せない変人さんだったわね!
鎧の姿は有名だけど本体は知名度ゼロらしいの。
うっかり名前を呼んじゃう所だった。


「何だよ……ってデカ…!」
「…お前誰だ?俺達に何か用かよ」
「別にお前らの事なんぞどうでもいい」
「は、はぁ…!?」
「おい…なんかコイツ、ヤバそうじゃねぇか?」


4人組の激臭マンよりずば抜けて背の高いクラッカーちゃんの威圧感は、彼らを怯ますには充分過ぎたみたい。

クラッカーちゃんの手がワタシの頬を解放し、そのまま滑らかに唇へと指が這う。
擽ったくてちょっと笑ってしまった!


「こいつはおれの女でね…すぐ迷子になるから探してたんだ」
『迷子ォ〜?』
「…んん?この肩の傷は何だ?」
『あ、これはねぇ』
「お前には聞いてないよ」
「ッ!」
「…殺っちまうぞ!テメェ!」
「そうかそうか…成程な。そうやってこいつの肩を斬ったのか」
「だ、だったら何だよ!」
「…じゃあ、さよならの挨拶をしようか」




その後は一瞬だったわ。怖いのなんの!
一撃、本当にたったの一撃で男達の身体が引き裂かれ、無惨に地面とオトモダチ。
真っ赤な血の川でゆらゆら泳ぐ人肉が
クラッカーちゃんのピンクの瞳に反射した。




『ねーねー』
「…やめろ、頬を突つくな」
『今日は本体ちゃんとデートなのね♡』
「鎧の姿で出歩いてみろ、パパラッチ共より凄い人だかりになるぞ」
『しかも今日は普通のお洋服着てる♡』
「…変装だよ、ただのな」
『普段もそういうカッコしなよ』
「嫌だね。窮屈だ」
『普段のが窮屈じゃん』
「うるさいなお前は。ほら、店入るぞ」
『え?ここ?』


オシャンティでシックでモダンでクールでキュートな高級店発見!
クラッカーちゃんに手を引かれそのお店に入ると、中には沢山のお洋服が並んでる。



「おれの為に着飾ってもらうぞ」
『着飾らなくても可愛いんですけど』


着せ替え人形タイムだ!



『どう!?』
「却下」

『これは!?』
「駄目」

『見てこれ!』
「センスゼロ」


あれ?これデジャブだ。
確か前は…カク!
そうだ!カクにもブティックに連れてかれてこんな風にいっぱい試着したっけ!
でも結局買って貰ったお洋服…ホテルに置き去りなのよね…クラッカーちゃんが拉致なんてするから…。


てかこの人カクと違って全然褒めてくれない!
センスゼロって何よ!
普段あんな変な格好してる人に
そんな事言われたくないわよ!!

さっさと褒めろーーー!


『ふんっ!どうよ!』
「……」
『何とか言ったら、』
「…悪くない」
『えっへん!』


どんなもんだい!
何着目かでようやくクラッカーちゃんはOKを出してくれた。とっても綺麗で素敵な服だけど値札にはゼロが沢山あった。しーらない!わっはっは!







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