series story

□わすれない
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「……ここで良いのかな」
「あぁ、いいと思う」


海の見える丘の上。
ここは島の最西端。

ナミ達は、グイディーちゃんを
その場所に埋めた。

リリカも来ていた。
そして、事情を知った数少ない
“善良”な島民も何人か来てくれた。




瓶の数は山ほどあり、
フランキーが穴を掘ってくれて
そこに丁寧に埋めた。
瓶からは出してあげた。






あの後、
怒り狂うナミの手を止めたのは
ルフィだった。

自分の下で血まみれになって
ピクリとも動かなくなった父親をみて
ナミは我に返った。



「…グイディー、」


ロビンは静かに目を潤ませた。
お墓に添えた花は山のよう。


「あなたは、立派な“花”だったのよ」


もうなっていたんだ。
グイディーちゃんが気付いてないだけで
グイディーちゃんは、花だった。


お花の様に可憐で、優しく、
周りとは違う異彩を放ち
儚くも懸命に咲き誇る、
美しき花。



「安らかにね。…また、会いましょう」


ロビンの頬を涙が伝う。
その横でナミも顔を突っ伏して震えた。


サンジはありったけのおやつを供えた。
グイディーちゃんは全然
ご飯を食べなかったけど
きっとお菓子が大好きだったのか
甘いおやつは沢山食べてくれていた。


天国へ行っても好きなものに囲まれて
穏やかに過ごして欲しいと願う。


“サンジお兄ちゃんのご飯、おいしい”


幼子が言う言葉はいつだって純心だ。
嘘など何処にもない。
だからサンジも嬉しかったのだ。



「グイディーちゃんっ、」


リリカは泣きながら花を添えた。



ルフィ達の出港の日、
お別れのあいさつに行く予定もしていたし、グイディーちゃんもずっとルフィ達について行きたいと言っていたから

朝から会う約束をしていたのだ。

けれど、いつまで経っても
玄関のベルを何度鳴らしても
グイディーちゃんはおうちから出てこない。

不審に思ったリリカは家にこっそり入った。


その時聞いてしまったのだ。

グイディーちゃん家の、
メイド達の会話を。



「また“造り直す”んですって」
「じゃあ、グイディー様は」
「昨日旦那様が殺したみたい!今はきっと冷蔵室の中よ」
「へえー。これで何度目かしら」


8歳にも、8歳でも
何を言ってるのか理解出来た。

ハッキリと聞こえてしまったのだから。


リリカは怒った。
メイド達に対して怒りをぶちまけた。

だってグイディーちゃんが殺されたのに
メイド達は普段と変わらない様な
普通の、いつものような笑顔を見せて会話をしていたから。



どうして、なんでとメイドに聞いた。

バツが悪そうに彼女等は口を紡いでいたが、1人のメイドが痺れを切らし
リリカに強い口調で言い放つ。


「そうよ、お父上が殺したの!」
「昨日ね。」
「でも良かったのよ、あの子は生きていたって幸せになれないんだから」


大声を上げて泣きわめくリリカに
メイド達は耳を塞いだ。

部下と思われる男の人達が
リリカを屋敷から無理やり追い出した。



嘘だ嘘だと思っても、
大人達のあの顔と、
グイディーちゃんがいつまで経っても現れない事から、いよいよそれが本当の事なんだと悟る。


だから、ルフィ達に助けを求めた。



嘘であって欲しい、
その想いが叶う事は無かった。




「グイディーちゃん、グイディーちゃん…っ!」


鈴の音の様な悲鳴を漏らし、
リリカは悲しみと怒りで涙を流す。

いつかまた会えたら、なんて
訪れる事のない夢の話なのだ。



ルフィはリリカの頭をそっと撫でた。

グイディーが1番懐いてたのもルフィだ。
仮面の下にどんな顔を持っていたのか、
どんな表情が出来るのか、

どんな風に笑えるのか、ルフィは全て知っていた。


「グイディーは、普通の人間として幸せになるために生まれてきたんだ」
「うっ、うぇ"ぇ…ッ、」
「泣くなよリリカ。次はきっと、キレイな花になって生まれてくるから」

















ーーー


グイディーちゃんの墓の前に植えられた花は、やがて広く広大に蕾を芽吹き、

壮大な花畑となった。
それはルフィ達がこの島を出て、
何週間も後の事だった。



その花の名前はハハコグサ。

小さく可憐なかわいいお花。



「グイディーちゃん!」


リリカは今日も此処へ訪れる。


花言葉は
「君を忘れない」















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