series story

□小粋の色
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「へぇ……そうかい」

ママの反応は予想通りだった。
5日ほどあの島に滞在し、そこから得た情報をママに報告するも、表情に明るさは無い。

ママは巨人族と昔“トラブル”を起こし
向こう側から忌み嫌われる存在になった。
それがために万国には巨人族が一人もおらず、何年か前に妹の1人がその蟠りを解くはずだった巨人族との婚約を捨てて逃げた。
だからこそ、
巨人族と言う単語には人一倍敏感だ。


「このまま偵察を続けるつもりだ」
「…」
「上手くいきゃァ、“巨人化”への可能性を掴めるかもしれねぇ。いいだろう、ママ?」

ママはニヤリと笑う。
今度はさぞ嬉しそうに頬を吊り上げて。






あの島への偵察…いや
グイディーへの聞き取り調査以外にも仕事は山積みだった。それらを均等に片しながら再び船を出すまでに、約1ヶ月かかった。

「……」

久々に向かう道中、妙な胸騒ぎがした。

なるべく早く島に着くように指示を出したお陰で、下船は予定よりも大分早まっていた。

「カタクリ様、港近くの岬に船が。恐らく、」
「海賊か」
「えぇ。」

北側を目指している途中に船を見かけた。
小さくて明確には分からないが
望遠鏡を覗く部下達が頷いた。
何処の者かは分からないが、この島は大きいから旅人や同業者は休息を兼ねて訪れるのかもしれない。もしくは自分達と同じく“陣地”にしようと考える者も。


「……騒がしいな」

北側の岩礁に着いた矢先、この島で初めて騒ぎ声を耳にする。こんな人の居ない山奥で。
声は複数存在しており、山の中に入るに連れて大きく耳に届いてくる。その方向は、グイディーの住処。

……嫌な予感はこれだったか。

カタクリは急ぎ足で進んでいくと、遂に大きな悲鳴が聞こえた。グイディーの声だ。
全速力で駆け抜けていくと、そこに広がっていた光景に怒りを隠せずには居られなかった。


『痛い…!!やめて!』
「大砲だ!大砲もってこい!」
「いやいや、油かけて火ィつけた方がいいんじゃねェか?」


グイディーに向けて、銃を、砲弾を、鉈をぶつける男達の姿。何が面白いのか皆笑っている。
恐らく先程見た海賊船の奴等だ。
カタクリよりも背丈の小さな男達がグイディーを取り囲んで攻撃し続けている。

『…痛い、痛い!』
「巨人の癖に、骨の無ェ女だな!」

彼女の、身体から
赤い赤い果肉のような血が流れている。

「……!」

怒りが沸きあがる。
誰に許可を得て、グイディーに武器を向けている?こいつはおれ達の所有物なのに。何故?何故見ず知らずの人間共が勝手に、無許可で、彼女を傷付けている?


ーーー許せねェ


『……うゥ…ッ』

ボタボタと血と涙の大粒が床に落ちて河を作る。その水滴がおれの足先に届いた時、もう我慢など出来なかった。

これで終いだ、とでも言うかのように男は大きな刃物をグイディーに振りかざした。
…が、その動きは止まる。

「…誰だ、!」
「テメェこそ誰だ。お前、誰に手を出していると思っている…?」
『カタクリ、さん』
「く、そ!!動かねぇ!!何だこれ!」

血に濡れたグイディーが涙目で顔を上げる。
男達の身体に纏わり付く、彼女の血を浴びた餅。赤く滲み、じわじわと蠢きながら、彼等の動きを止めて力をかけて行く。

「おれ“達”を、誰だと思って武器を向けている?」
『……“達”…?』
「舐めた真似してくれたな貴様ら…!」

顔も、視界も、身体も、
鈍く軋む音を立てて歪んでいく。
気付いた時にはもう遅い。ゆっくりと力をかけて、その場にいた男達の身体を砕き崩していく。

亡骸と化した途端に能力を解くと、無様にも地面に倒れた。辺りが静まり返った頃にカタクリは手袋を直す。


「おれ達はビッグ・マム海賊団だ。……もう聞こえちゃ居ねぇだろうがな」

鋭く光る凶悪な目をみて、グイディーは安堵したように微笑んだ。







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