series story

□緑や翡翠
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「くそ!くそぉ!」


腹に穴が開こうとツタが脚に絡みつき壊死していこうと、男は諦めない。
爪が取れても尚、グイディーを求めて植物を掻き分けていく。



「ガキが…図に乗りすぎだ…!」


再び檻が姿を現し、その中で倒れているグイディーを目にした途端
血眼になって檻を引っ張り出した。
ブチブチブチ…と植物を千切り檻ごと抱える。



「お前は、…これから、俺と一緒にッ、俺の為に働くんだよ!!」



檻の中でぐったりしているグイディーの腕をもう一度刺す。
グイディーの顔は、血の気が無くなり唇は完全に白くなっていた。



「てめぇのそのおかしな力で、俺と一緒に…ッ、金を、稼ごうや!」
『………』
「!?」



男がギョッとする。
グイディーの目や耳、肌の至る所から芽が生え伸びているのだ。

肌の潤いが減少し、所々ヒビ割れている。生気など既に無く、まるで、木製の人形の姿。



「おい、…どうしたんだよグイディー!…起きろよ!!」


檻を揺さぶっても何も変わらない。



「そいつをどうする気だ?」
「…!」







ようやくグイディーに辿り着いたエースが見たのは、今にも男がグイディーを連れ去ろうとしている所だった。



「そいつに何をした」
「な、…何だ、てめぇは」
「質問は俺がしてる」
「……!」


エースがゆっくりと男に近寄ると、男は檻の中のグイディーを隠すように後ずさる。


「はは…見りゃ、分かんだろ…?」
「…」



変わり果てたグイディーの姿。
エースはグイディーを見つめながら、男に歩み寄る。


ボロボロの男を、更に強い力で一発殴り付けると部屋の隅まで飛んで行く。

グイディーの入った檻はその場に落とされる。



「お前は俺の恩人を傷付けた。…これがどういう意味か分かるよな」
「…成る、程…、あんたも、このガキの森に行ったのか…」


薄れゆく意識の中で、男は爽やかに笑った。男の仮面のような笑顔を見て、エースは益々顔を歪ませる。


「…こいつがグイディーの言ってた“最初の人”か」
「……ッ?!」
「助けてもらった恩人に対して、お前は何をしようとした…?」
「…な、何を」
「答えろ!!!」



胸倉を掴み、無理やり体を持ち上げて壁に叩きつけた。エースよりもガタイが良く、身長もある男をいとも簡単に掴み上げたのだ。
エースの腕に力が篭り、盛り上がった筋肉の間から血管が浮かぶ。



「…あ、あんただってグイディーの“力”を知ってんだろ!?…だったら、利用しねぇで…どうしろっつーんだよ!?」
「…テメェ…!」


エースの右拳が炎を纏う。
火花を散らす手を後ろに回し、目一杯男の顔に向けて振りかざした。



「…ぬぁ…ッ!!」
「“火拳”」
「…ひ、火拳…?」
「俺ぁ、…火だ。」
「おま、…お前!まさか、」






男が最後に見たのは、先程よりも熱を増した火の拳だった。








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