series story

□緑は陰影
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「でよ、そこに現れたのが20mは超える巨大な海王類!」
『ひぇー!』
「大口開けて俺らに突進してきたんだ。変な渦潮と巨大海王類!状況は最悪中の最悪でさ、」
『ど、どうなったの!?』
「そんなの一発だ!親父の覇気で海王類はKO!」
『はき?』



俺とグイディーは時間を忘れて色んな話をした。ほとんどが俺の冒険の話。
自分の話にこんなに食いついた反応をされるのは中々無い。俺は夢中になって色んなことを話した。

海の世界を知らないグイディーは、あまりにも無知で、話が進むにつれて表情は煌めく。



『うっそー!?』
「本当だって!マジなやつ!」
『えぇー信じられない!そんな事が可能だなんて!』



こいつはマジで世の中の事を何も知らない。と言うか、知らなさ過ぎる。
俺にとっての当たり前ですらもグイディーには通用しない。それが益々面白くて、もっともっと、とグイディーに話をするのだ。

こんな辺鄙な島に、当然新聞や便りなんて届かないだろう。
最近起こったニュースに時事ネタ、何一つとして彼女の知っている情報が無い。



『あくまのみ?』
「あぁ。俺はそいつを食ったんだ」
『何それ?』


不可思議な疑念を率直に向けられる。
俺は悪魔の実の事を一から説明した。
己の拳を炎に変えて。



『わ!?』
「この通り、俺は火だ」
『…じ、自分自身が火になったっていうの?』
「あァ。」
『じゃあ、水をかけられたりしたらエースはどうなっちゃうの!?』
「ただかけられただけじゃ何も無ぇよ。」




海が完全に敵になる事も、己の力の便利さや不便さも全て。
泉に身体を浸けた時も、海ほどじゃないが嫌な感じはした。

けれどそれ以上に泉の力にその感覚は足負かされていた事も事実。



『凄いね…お外の世界にはそんなに不思議で溢れてるのね』
「…俺にしちゃここもかなり不思議だけどな」
『そうかな?』
「そうさ。」



グイディーは俺の話を聞きながら器用に草の葉で何かを作っていた。



「それは?」
『ん?葉船よ』
「?」


出来上がった代物を見れば、草の葉で出来た船だった。
それをゆっくりと泉に浮かべると、しっかりと船の様に浮かんだ。

こいつは世を知らないが、俺の知らない事をたくさん知ってる。
それは決して役に立つ事とは思わないが、グイディーにかかれば普段気にも止めない石ころや草や葉っぱすらも遊び道具に変えるのだ。

凄い。
凄いとしか言いようがないけども、
なんだか、無性に可哀想に見えてきた。



「お前にも色んなもんを見せてやりてぇなあ…」
『その気持ちだけで私は胸一杯よ!』
「行きたいとは思わねぇのか?」
『うーん、』
「この島から出たいとか?」
『…思わないかなぁ。私が存在してる限り、この森を守らなきゃ行けないから…』
「ならよ、」


誰が決めた事かは分からない。
彼女自身不自由を感じてるかも分からない。
けど、グイディーに無性に、
世界を見せて見たい欲が俺の中で溢れ出す。
これはグイディーへの同情からじゃない、ただ、様々な物を見て、感じて、触って、喜ぶ顔が見てみたかった。



「その役目が無かったら、どうなんだよ?」
『うーん…』




グイディーはそれでも
この島から出たいと言わなかった。

森を守る役目をこなすと
俺に冷静に伝えた。







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