series story

□夢散る夢
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「これは…!?」



開いた扉の先に、それは居た。
突如見た夢から覚めれば、
扉の奥にそれは居た。



「イゾウ隊長!気をつけてください!」
「…こいつぁ、一体…?」


蓮の花に蝕まれた、一つの死骸。
その死骸が身につけている男物の服は見覚えがあった。


全身から花が咲き誇り、養分水分血液全てを吸い取られた、無残な死骸。



「この男は、さっきの夢に出てきた…」



彼女に酷い事をした、1人の男、一人の変態野郎の行く末が。
そして、その死骸の真下から、

若い女の腕が見えた。




「…!」
「隊長!?」
「こいつの下だ!」
「!?」
「こいつの下に、“彼女”が居る!!」



イゾウの腕が死骸に伸びる。
無我夢中で花を毟り、その下へ手を求める。

隊員達もそれに手伝い、花をむしり取って行く。




「うわぁあ!!」
「!?」



すると、花々が突然隊員達の足に絡みついた。
まるで、食べようとして居るように。


「くそ…!」
「隊長!!」


次々と花に絡みとられ、飲まれて行く自分の隊員達。



そして姿を現した、
夢にまで見た、夢でしか見た事なかった、ずっと探し求めてた彼女の姿。

美しく眠り、目を閉じたあの子が。




「起きろ!!」


揺さぶっても、叩いても彼女は起きない。


「起きろ…、俺だ…!イゾウだ…」


嗚呼、夢で見た通りの姿形。
可愛らしくて、美しくて、
夢の通りの彼女が、現実に今目の前に居るのに。


「お前を脅かす男は…、もう死んで居る…!!」


とっくに、この世から消えて居るというのに!!



「起きてくれ…!!お前が畏怖した男は、もう居ない!!」



部下の悲鳴と、
自分の大声。








起きてくれ、眠り姫。
夢から、己の“世界”から。





「……起きてくれ」




そっと、その固く閉じた唇に
己の唇を重ねた。




夢でしたように、彼女の頬や髪を
優しく撫でながら。











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