series story

□夢誘う夢
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廃れた島だった。

聞いてたモノとはまるで違ってた。
木々や草花は枯れ果てて、生物など何も居ない、そんな島。



「何か危険なのが居るかもしれねぇ。テメェら、心して散策に出ろ」
「はい!イゾウ隊長もお気を付けて」


奥へ進んで行くにつれ、その姿がよく見えた。





昨日も良く眠れた。
だけど、彼女には会えなかった。
俺の眠りが深すぎたのか、
はたまたサークルから出ちまったのか?
理由なんて分かりもしないが、俺は昨日夢を見なかった。


奥へ奥へと足を踏み入れると、
そこには大きな洋館があった。
そして…


「蓮の…花…!」


一面を、辺り一面に咲き乱れる蓮の花。彼女の言ってた花々。
だがそれは、夥しいまでに咲き誇り、洋館やその周囲を花が不気味に包んでいた。


「成る程…それでこの島の生物や植物が、花の養分になった訳か」



栄養、命全てを蓮の花に吸い取られ、洋館と彼女を守っている様だ。
それは歩くことも困難に感じる程。
しかしイゾウ達は臆する事なく洋館へと踏み入れた。






洋館の中に行くにつれて、花がどんどん増えて行く。まるでこの場全てが泉の様。

そこに見える、頑丈な扉。
いくつも、幾千もの鎖や鍵が掛けられた、花に覆われた扉。



「焼け」
「了解」


扉全体に油と火を灯すと、扉周囲を覆った花々は焼け落ちて、無残な姿の扉が姿を現した。



「イゾウ隊長、この扉どうします?」
「無論、こじ開ける。」
「この先に…イゾウ隊長の望む“お姫様”が居るんですね」
「そう踏んでいる」






“助けて”







「!?」




喉の奥、頭の奥に
ふと微かな声が聞こえた。





“…私を、食べないで”






「……!?」
「なんだ、今の」
「お前達にも聞こえたのか!?」




泣き声、喚き声、啜り泣くあの子の声が聞こえた。
間違いはない、彼女はこの扉の奥にいる。







その時、イゾウ達の目の前が
真っ暗で、真っ赤な煉獄に包まれた。








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