ブルーホール

□二
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結局、やってきた軍艦5隻は何も手出ししてこなかったので、戦闘にはならなかった。
中将クラスともなれば、“そういう”判断力はあるらしい。

なにぶんストロベリー中将達はとある犯罪者達を護送中。
そんな中、天下の白ひげと潰し合い
万が一の事になったら堪ったもんじゃない筈だ。



『つまんない〜って顔ー』
「そりゃあそうさ。久々の略奪だと思ったのによ」
「こんなんじゃ身体や武器が鈍っちまうぜ!」


ベリー・ベルは船員さんと会話中。
再び甲板にやってきて、“業務”の続きをこなす。




もっぱら、睡眠や戦闘以外はほぼ甲板で船番をしてるため
ほとんどの敵はベリー・ベルが見つけている。



「そんなマントして、暑くねぇのか?」
『暑くなぁーいよ!だって中は素っ裸だから!』
「「「は!?」」」
『ウーソぴょ〜〜ん』



ベリー・ベルはほぼ甲板に出てるから
クルーとはほとんどの顔見知り。
ナース以外の女として乗船してるためなのか、有能な船番だからなのか
はたまた、ガキだからなのか
ベリー・ベルの事は、ほとんどのクルーが理解済み。



『炎のお兄ちゃんっ!』
「……」
『アイス食べるー?』
「………いらね…むごっ!?」


ベリー・ベルは手に持ってた
長めのアイスキャンディを、
無理矢理エースのお口へ突っ込んだ。


『いひひ!エース君、汗びっしょり!水分取らないとね、ぶっ倒れちゃうよ?』
「……」


気付けば、全身から吹き出る大量の汗。
直射日光と、様々な不満や不安のせいでエースの体はカラカラだった。

口の中に広がる久しぶりの甘みと
その燃えるような身体を冷やす冷たさ。
じんわりと、
自分の中に溶け込んでいく

甘いアイスキャンディ。


『ほらみてぇ!食料たくさん!』
「!」


バサバサバサ、
マントを少し浮かせると、
魔法のように大量の
果物やお菓子、いくつもの水筒が現れた。


「!?」
『ベリー・ベルねぇ、この前サッチ隊長達がね、エース君の事話してるの盗み聞きしたの〜』
「……なんだよ」
『“ロクに飯も食わねぇ、どうしたもんか”ってさ!』
「!」



食料を綺麗に並べ
沢山の水筒には、
いろんな種類の飲み物が入ってた。

それを不器用にコップに注いでいく小さな手。


お茶、ジュース、スムージーなどがエースの目の前に置かれる。


『はいどーぞ!』


エースはアイスキャンディを食べ終わると、
差し出された数々のジュースを口に含んでいく。



エースとベリー・ベルの周りは、まるでお店屋さん。
そんな彼女の口は弧を描く。
気付けば、無意識にその食料を自分の口に運んでいる自分。




「ベリー・ベルちゃ〜ん?」
『あれれのれ?サッチ隊長!』
「……スムージーやら果物がやけに減ってると思ったら…」
『盗んじゃった!』
「そっかそっか!じゃなくてな!…まぁいいけどよ…」
『みて隊長!エース君ねぇ、こんなに食べてくれたー!』



それをみて、サッチは嬉しそうに笑った。
食料を泥棒されたことはもう忘れたみたいだ!


「へぇ、良かったよ」
「……!」
「お前、全然食わねぇんだもん。皆心配してたぜ」
「…心配………敵の俺を心配か?」
「…あぁ、そうさ。皆お前を心配してる」
「………」


エースの心は、
どんどん変わっていきます。

どんどん、目つきが優しくなるのです。





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