笑う少女

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「……」

その場に居た者は、唖然していた。もしくは驚愕。

「天竜人の…奴隷」

信じられないとでも言いたかったのか、それでもこんな状況で嘘を言う事など出来ないと言う事が分かると、その場にいた者達は焦っていた。

「脳の後遺症は、記憶喪失か」

それも意図的にな、と船医は呟いた。

「辻褄が合いましたね」
「そうみてぇだな。」

背中の傷跡が、かつて焼き入れられた刻印を消した痕だと言う事。
そして自分の辛い過去の抹消


ザジは、既に平静さを失っていた。
体操座りをして自分の腕の中に顔を隠すようにしまいこんでいる。
その表情は、酷く動揺していた。

『…』
「ザジ?」

自分の腕を引っ掻き始める。

『やだ、あいつらの、…血が』
「まずいな…」

船医が異変に気が付いたのか、ベッドに歩み寄る。


『…やだ、…そんなの、やだ』

自分に流れる血液は、

『……汚い、』
「ザジ、気を保て」

憎まれ恐れられし世界貴族、天竜人の血液だから。
最低最悪の種族の血液。

「テメェら出ろ」

まるで邪魔者を追い出すかのようにキッドはその場に居たクルー達にそう告げた。




船医とキッドとザジの三人だけになっても、ザジはエスカレートしていく。

『…ぅ…っ』

残忍で、残虐な人間の血が、自分にも流れているのだ。

掻き破った皮膚からは、血が溢れだしてくる。その爪に込めたのは、怒りか哀しみか。
両方なのだろう。










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