笑う少女

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少女は全てを思い出した。
生きていく為に消された記憶を、取り戻してしまった。

「……、」

何を言い出すのか、夢を見ているのか。
それとも本格的にイカれたのか、あるいはーー…
本当に真実なのか。

「何を、いってんだ」

クルーの一人が、半ば笑いながら聞き直した。

「冗談よせよな」

ザジは“呪文”を唱え続けた。
瞳に溢れる雫が、何かを物語る。


『…違ッ…、嘘、じゃ…ない…』


冗談でもいっていいことと悪いことがある!とクルーの1人は怒鳴りだした。

『天竜人、と奴隷、の…』




元より天竜人の存在は海賊なら誰もがその名を聞いて、芋虫を噛んだような顔をする。
金と権力でモノを言わせる、自分らを神だと崇める、一般庶民はゴミ同然。海賊など埃以下な存在としか思っていない。

無差別殺人が合法の地位に入る、気の狂った奴らだ。



キッドも、クルーも、
天竜人など大嫌いだ。





キラーとヒートはゆっくりと顔を合わせた。キラーはザジの肩を掴み

「無理に思い出すな」

それでもキラーの声も、誰の声も耳に入って居なかった。

『…背中に、せなッ…か……――』
「!」

それは、天竜人の驚異を知っている誰もが覚えのある事だった。

「お前、まさかホントに……!」

天竜人の奴隷となった“モノ”は人間以下の称号として、背中に―――

「…奴隷の、刻印!!!」
『…ーー!!!』

天かける竜の樋爪。
その消えない刻印を、背中に焼き入れられる。

少女の背中にも、かつてはその刻印が刻まれていた。



ザジの本当の闇の根元は、生まれたときからあった。






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