笑う少女

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1週間以上が経過し、遂にキッド海賊団はシャボンディ諸島に上陸した。
話によるとなんと、キッド海賊団の他にも懸賞金額を億の桁を越えたルーキーが集まっているとの。

諸島に着くまでの数日間で、ザジはさらに船に馴染んでいた。
怪力になったザジを皆が昔みたいに、力仕事を頼んだお陰で大分打ち解けあうことができた。

大男10人使うはずの力を、たった1人でこなしてしまうその姿が、何とも皆の目には逞しく映った。

「お頭、此処は海軍本部が近くにあるんでなるべく騒ぎは…」
「分かってる」


このシャボンディ諸島で騒ぎを起こせば、自分等が危ない目に遭うのだ。
それを警戒して、キッド達は新世界を目指す。

「頭、これからどちらへ」
「適当に回って酒場でも寄る」

クルーも、各自買い出しや暇潰しに出掛け船内にはほとんど人が残らぬ状態になった。
キラーやワイヤー達数人はキッドに付き添っていく。

そこに1人、ザジもこれからどうしようと悩んでいた。
持っている服は2枚しか無い。それに実用品なども揃っておらず、買いに行かなければならないものは数多くあった。

「お前も、何か買いてぇもんがあるなら行ってこい」
「1人で、か?」

と、過保護のキラーが止めようとした。

「心配すんな、こいつは“怪力”だぞ?」

怪力。
それはザジに付けられた女らしさの欠片もない2つ名だった。

「それに、船の場所さえ分かればなんとかなる。ザジだってガキじゃねぇ。」

1人で買い物することに強く憧れを持っていたザジは、その言葉が聞こえると嬉しそうに振り向く。

『行ってきていいの?』
「賞金稼ぎには気を付けろ。お前もお尋ね者だ」
『任せてっ』

あのときのように無邪気に笑う少女は、幼いながらも逞しさを感じた。
そしてクルーたちの流れに任せてザジも船を降りてシャボンディ諸島を満喫しにかかった。








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