かざぐるま

□4
2ページ/2ページ














「…急に窓から侵入してきた?」
「そうなんだよ!暇だったからって、」
「空軍の来客はありませんよ長官。」
「ならば答えは一つじゃな」
「クッソーーーー!!!やっぱ侵入者だったのかぁぁ!!!」
「長官も少しは自分で対処できる力つけたらどーなんだ?」

カリファが鞭をラビットに向ける。
そして、聞こえぬ様に小声で呟く。

「……CP9抹殺を目論む奴等の1人でしょう。早く殺した方が、」
「せっかく任務の短期休暇中なのに」
「フクロウとクマドリは任務だし」


『…ダルいなー』
「…なんじゃ?消していいのかこいつは」

ラビットはカクをずっと見つめる。
その見つめている先は、勿論鼻。

『え、…鼻…やば…』
「長官、消しても良いかのぅ」
『CP9なのね』
「「「「「!!」」」」」
『世界政府の諜報…だったっけ』
「聞こえてたのね…」
『聞こえずとも、口の動きで分かるモノよ。それに頭も良いから、そういう影の存在も知ってるのサ』

存在を知られてしまえば口外される事もある。
一斉にラビットを威嚇する。

「殺す前に聞いてやろう。何者だ」

ルッチがラビットの前に出た。

『何だよモヤシ眉』

クスクスと嗤うラビットに、次の瞬間ルッチの制裁の攻撃が下された。
思い切り顔を蹴り飛ばしたつもりだったが、

「…」

ルッチの足に人を蹴った感覚が無かった。

「き、消えただと!?」

スパンダムの声が静かに響いた。

『私はラビット』
「!」
『それだけサ』

部屋の隅の棚の上に、小さくちょこんと体操座りをしていた。

するとカクが刀をとり、ラビットに向かって走り出す。そしてそのまま少女に振り下ろすも。

「また、消えたじゃと…」
『お前らにこのラビットが殺せるの?』
「!」

空間移動の使者は、誰も攻撃する事が出来ないのだ。

『所詮は世界政府の犬』
「……」
『あはは、怒った?モヤシ眉!』
「お!長官!人手不足って前言ってたよな?こいつ強そうだしスカウトしちまえばいいんじゃねぇか?」
「ジャブラは黙っていろ」
「てめっ」

するとラビットはクスクスとほほ笑んだ。

「長官、殺害許可を」
「無断で此処に踏み込んでしまったのですし」

カリファとルッチが殺気立ててラビットに近づく。

『何でもいーよ』
「…何だと?」
『頭が固いなモヤシ眉』
「…プッ」
「ジャブラ笑うとこじゃないわ」


スパンダムはビクビクとしながらルッチ達の後ろに隠れた。

『今日はもうバイバイだ』
「逃げられると思っているのか」
『私は逃げられなかった事なんてないの』
「!」
『ばいび、モヤシ眉』


またしても軽やかな笛の音が、この部屋、割れた窓ガラスの向こうの空に響き渡る。

『あはは!バーカ!』

お決まりの如く、ラビットは中指を突き立てる。
そしてそのまま割れた窓ガラスから、再び飛び降りた。

「!」

ルッチ達が後を追おうと自分達も窓の外から降りようとしたが、
目の前を巨大な鷲が飛んでいるのだ。

「な、なんじゃ!?」
「…チッ…!」

そして巨大な鷲の背中には、ラビットが乗っていた。
物凄い速さで鷲は飛び立って行き、僅か数秒で米粒のように小さくなってゆく。

やがて静かになった部屋で、スパンダムはボソリと呟いた。

「…元、空兵…」
「…長官?」
「2年前に、空軍で起きた事件を知ってるか」
「…」

誰も返事はしなかった。
この事件は、政府によって揉み消された事件だからである。

「2年前、空軍内で大量虐殺事件が起きた」
「…!」
「…内乱って訳ですか」
「それ以来、空軍は暫く活動を自粛している筈だ」








――――

『……』

空を飛び立つよ、何処までも。

『どこいこっか』















次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ