物語

□紳士の悩み事
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部屋に漂うのは、淹れ立ての紅茶の香に、紙とインクの匂い

時間の流れが疎らなこの世界は、今日は柔らかな日射しが眩しい

ペンを休ませて、少しぬるくなる紅茶を一口。

窓辺の明かりが、室内を照らす。

英国紳士の仕事風景

と、言いたい所ですが?

少々問題がある風景があった。

「ハル・・・」

優美な英国紳士が、沈痛な面持ちで頭を抱えていた。

彼が溺愛する彼女は、学校が早く終わったので、事務所でお昼寝。

「ん〜・・・」

問題点を幾つか上げるならば?
・寝てる場所はソファ
・制服
・デスクからよく見える

ハル・・・君は襲われて欲しいのか?

寝返りを打つ度に、紺色のスカートがめくれ上がる。

しかも、少しずつ捲れるので、バロンが書類から目を離すと、少しずつ肌が露出。

白い太股が惜しげもなく晒され、バロンには拷問である。

「悪戯が過ぎると、お仕置きが必要になるな?」

エメラルドの瞳が、茶色の前髪から妖しげに覗く。

徐に立ち上がると、ソファで眠るハルの所へ。

白の手袋が襟元の赤いリボンを解くと、しゅるりと音を立てる。

気付かれぬようボタンを外し、鎖骨が見え隠れする。

呼吸をするごとに、上下する胸を見ながら思わず吸い付きたくなる。

そんな誘惑を堪えつつ、一つまた一つとボタンを外す。

「うぅん」

また不意打ちに寝返りを打って、更にスカートがめくれ上がった。

ここまで無邪気にされると、歯止めが利かなくなりそうだ

紳士といっても、所詮は男

「ば・・ろん・・・」

優雅な午後には、些か刺激の強い結果となりそうな。

ゆっくりと目を覚ましたハルは、優しく撫でるバロンに甘えた。

「おはよう?」

手袋越しに頬を撫でると、ハルはまたすり寄る。

「絶好のお昼寝日よりだよ?」

寝ぼけですり寄っては、バロンの理性を千切った。

「バロンも、お昼寝しよ?」

袖口を摘んで引き寄せて、ねだるハルに勝てるはずもなく。

「ソファは狭いよ?」

一人が寝れるスペースしかないソファは、ハル一人で独占中。

「ベッドにつれてって?」

両手を広げて願うハルに、横抱きにして答えた。

「お仕事はおやすみ」

休憩どころの話じゃなくなるので、今日は店仕舞い。

あんなに可愛くねだられては、仕事なんて手につかない。

「どうなっても知らないぞ?」

乱れた服にも気付かず、これからどうなるとも知らない。

「出されたデザートは、美味しく頂く主義なんでね?」

耳元に囁いて、ハルはくすぐったそうに微笑んでいる。

「今日は帰さない」

寝室に消えていく二人を見ていた、ムタとトトは二人が部屋に入ったのを見計らい、プレートをcloseに変えた。

「男爵の暴走にも頭が痛いな。」

「今に始まった話じゃねぇだろ?」

揃って頭を抱える結果になったのも、元を辿れば男爵とハルが出会ってからである。

「だが、ハルにも少しは学習して貰わないと。」

「同感だぜ。」

毎度毎度、バロンを無自覚に誘っては泣く羽目になっている。

「このまま悪化したら、仕事も大変なことになるぞ?」

事務所の未来に一抹の不安を抱える二人だった。

「ハルが泣きながら出て来たら、フォローしてやろう。」

「ああ」

不安しかない二人であった。

今頃、隠れ嫉妬に鬼畜の猫耳男に色々やられている頃だろう

「フォローしようにも、出来やしないな。」

「泣きたいぜ・・・」

二人揃って大絶叫

「どーせ、男爵のことだ。ハルから堕ちる様仕向けんだろ」
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