風、吹けば恋 特別編

□世界はキセキとハッピーでできているA
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待ち合わせ時間丁度に駅に着いたものの、幸男くんはまだ来ていなかった。

(あれ? 珍しいなぁ)

待ち合わせにはたいてい幸男くんが先に来ていることが多いのに。

(ま、こんな日もあるよね)

私はその場にボストンバッグを下ろし、伊豆のガイドブックを開いた。

そのガイドブックには、ビッシリ付箋が貼ってある。

(行きたい観光地、食事処、全てチェック済みだもん!)

私はそれを読み返しながら、幸男くんを待った。

待つこと15分。

「悪りぃ、待たせたな」
と、幸男くんが慌てた様子で駆けつけてきた。

幸男くんは私の前に立つと寝癖のついた髪をなでつけながら言った。

「いつの間にか目覚まし止めてて、二度寝しちまった。ごめん」
「ううん、大丈夫」

そう言いながら、私は幸男くんはを見上げた。

幸男くんは本当に今しがた起きてきたという感じで。
まだ、半分夢の中といった表情だ。

「……」

私は今朝バッチリ目が覚めたのに。
なんだろ、この温度差。

つい黙り込んでしまっていたら、幸男くんが気づかうように言った。

「…晴れて良かったな」
「え、あ、うん!」

私は我に返って、うなずいた。

「一週間前の予報じゃ今日は雨ってなってたから、私、毎日てるてる坊主作ってたの」
「マジかよ」
「うん」
「…小学生みてぇだな」
「…馬鹿にしてる?」
「んなことねーよ。おかげで晴れたんだから」
「ね。てるてる坊主の力も侮れないでしょ?」
「だな。さ、行こうぜ」

そうして、私と幸男くんは電車に乗り込んだ。
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