風、吹けば恋 特別編

□世界はキセキとハッピーでできている@
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そうつぶやくように言うと、みんなの動きがピタっと固まった。

「旅行って…森山さん発案の?」
「あ、それとは別で…」

キョンちゃんの質問に、私は答える。

「幸男くんとふたりで旅行するって約束したんだ〜」
「「「「……」」」」
「あ、だからもしかしたら森山さん発案の旅行は、私と幸男くんは参加しないかも…今からじゃ金銭的にも日数的にもきびしいし…」
「「「「……」」」」
「あれ、みんなどうしたの?」

するとみんなは冷ややかな視線を私に向けた。

「ふたりで旅行って…。あーぁ、これだからリア充は」
と、キョンちゃん。
「温泉でしっぽりずっぽりですかぁ」
と、貴志さん。
「……不潔」
と、サクラダさん。
「愛生ちゃん、不健全よっ」
と、も〜ちゃんに口々に責め立てられてしまった。

(なにそれっ?!)

なので、私は慌てて弁明した。

「いや、でもまったく具体的なことは決まってないし! 幸男くんがみんなと一緒の方がいいって言ったら、そっちを優先するし…!」
「別にいいよ。そんな気使わなくても」

キョンちゃんが言った。

「前から約束してたんだろ。行ってこいってば」
「そうだよ、愛生ちゃん」
「キョンちゃん、も〜ちゃん…」
「それで大勢で旅行しても、私たちがオジャマムシなだけですから」
「そうですよぉ。そっちの方が気使っちゃう〜」
「サクラダさん、貴志さん…」

みんなの思いやりあふれる言葉でジーンとしていたら。

「あ、でもぉ」
ふと、貴志さんが思い出したように言った。
「カレシと旅行って、絶対何かしらケンカするんですよねぇ」

気になって、私は貴志さんにたずねた。

「ケンカって、どんなことで?」
「まぁ、些細なことですけど。こっちが歩き疲れてるのに、あっちは気づかないでさっさと歩いて行くのにムカついたりとか。あと、食事する店で意見が分かれて、結果入った店が不味くて気まずくなったりだとか」
「そんなことで?」
「旅行中って、普段気にならないとこまで目につくんですよ。なんせ一日中一緒にいるんですから」
「…そっか」
「ま、水沢先輩と笠松さんに限っては大丈夫でしょ! なんせウザいくらいラブラブだし!」
「ごめんね、ウザくて」
「ごめんなんて思ってないでしょ…ニヤニヤして」

そう呆れられながら指摘されても、私は能天気にヘラヘラしていた。



その日の部活帰り。
私は幸男くんが一人暮らしするアパートに向かった。
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