風、吹けば恋 特別編

□世界はキセキとハッピーでできているG
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「…んーっ…」

鳥のさえずりと、カーテンの隙間から差し込む朝日の眩しさに眠りから覚めた。

「……」

私はムクリと布団から抜け出して、寝ぼけ眼で辺りを見回す。

「…うわぁ〜…」

辺りには、食べ散らかしたお菓子の袋やジュースの空き缶があちらこちらに散らばっている。
大惨事だ。

「……」

隣に敷かれた布団に目をむける。
掛け布団も枕も綺麗に整ったままで、人がいた形跡すらない。

(笠松さん、やっぱり帰ってこなかったんだ…)

寝ぼけた頭で、昨夜の記憶を整理する。
鉄平くんにここに送ってもらった後、深夜まで待ったけど帰って来なかったんだ。
あの甘い声した女の子と一緒なんだと思うとやりきれなくて…。

(私、買ったお菓子全部やけ食いしたんだ…)

それで胃がもたれて眠れなくなって…やっと明け方に眠ったと思ったのに…。

「……」

時計を見れば、朝の7時。
いつも通りにきちんと目覚める体内時計が、なんだか呪わしい。

「……」

私はもう一度バタッと布団の上に倒れこんだ。
このまま昼まで二度寝してしまおうか。

どうせ、今日もひとりだ。

(…いや、せっかく旅行に来てそれはもったい)

起きよう。
私は気を取り直して、布団から起き上がった。
まずは、畳の上に散らばるゴミを簡単にひとまとめにして部屋の隅に置いた。

(あとは、掃除の人に任せよう…)

そして、洗面所に向かった。

「ふぁ〜ぁ…」

ひとつ欠伸をした後、鏡の中の自分の顔を見る。
冴えないひどい顔をしている。

そんな顔を洗おうと、蛇口に手を伸ばした時だった。

「ん?」
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