風、吹けば恋 特別編

□intermissionX
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青峰は億劫だった。

「あー…、めんどくせぇ」

明日から一週間部活が休み。
だというのに、先ほどから口をついて出るのはそんな言葉ばかり。

しかし今の彼にとって、部活は億劫ではなくなっていた。
では、何が彼を億劫にさせているのかというと。

明日からの家族旅行のことだった。

「もうガキじゃねぇんだから、親と旅行なんざうざってーんだよ」

と、つぶやく青峰の隣りで。

「みてみて、大ちゃん。この宿のご飯美味しそ〜」

と、ガイドブックを開いているのは、桃井さつきだ。
さつきは青峰と対照的に、ウキウキはしゃいでいる。

そう。
明日からの家族旅行は、幼なじみであるさつきの家族とも一緒なのだ。

青峰家と桃井家の合同旅行は、毎年の恒例行事なのだった。

「楽しみだね〜、大ちゃん」
「全然」

にこやかに話しかけるさつきに、青峰はそっけなく返した。
当然、さつきは不服そうに頬をふくらませる。

「もーっ、人が楽しみにしてるのに、どうしてそんな興ざめする態度するかなぁ」
「家族と温泉なんざ行って何が楽しいかよ。キレーなネェちゃんと混浴できるならともかく…」
「何それ、そんなことばかり考えて!やっぱり大ちゃんってスケベ!」
「別にオレだけじゃねーよ。野郎なら誰でもそうだろ」
「テツくんはそんなこと考えないもん!」
「考えてるよ。あいつはムッツリタイプだな」
「やだ! 違うもん! へんなこと言わないでよ!」

…という風言い合いながら歩く部活帰りの道。

そんなふたりの背後に二台のマウンテンバイクが近づく。

「よぉ」
「お、お疲れ様です」

そして横を通り過ぎる際に、それに乗った人物が声をかけてきた。
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