風、吹けば恋 特別編

□世界はキセキとハッピーでできているB
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しまった。
オレは、なんてことをしでかしたんだ。

「愛生。おい、愛生、大丈夫か?!」

何度も呼びかけても、愛生はぐったりしたままだ。

このまま風呂場で意識が戻るのを待つわけにもいかない。
オレは濡れたままの体の上に服を着ると、愛生を抱き上げて部屋の中へ戻った。

幸い、布団はすでに敷かれてある。

(その前に、服着せねぇと…)

愛生はバスタオル一枚を巻きつけただけの格好。
しかも、それで湯船に浸かったから濡れている。

(ん? 着せる…?)

ふと、思考が立ち止まる。

(着せるって…)


どうやってだよ?!


「……!!」

途端に、心臓の鼓動がバクバクと激しく打ちつける。

「……」

だが、このまま放置して風邪でもひかせるわけにはいかねぇし。

「……」

オレは意を決して、愛生が身につけているバスタオルに手をかけた。

が。

「…へくしょんっ」
「!!(ビクーン!)」

愛生のくしゃみに驚いて、反射的に手を放した。
しかし愛生はまだ意識がはっきりしないようで、ぐったりしたままだ。

「……」

まだ心臓がバクバク鳴っているが、このくしゃみで少し冷静さを取り戻した。

まずは、乾いたバスタオルで身体を拭いてやる。

「……」

それからそのバスタオルでさらに体を包み、その下の濡れたバスタオルを引き抜いてやる。

そして浴衣を羽織らせて、そのまま布団の上に横たわらせる。

掛け布団をかけるとこまで済むと、オレは一気に脱力してしまった。

「……(ゼーハー)」

(な、何の苦行だ。こりゃ…!)
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