風、吹けば恋 特別編

□世界はキセキとハッピーでできているA
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旅行当日の朝。

目覚まし時計が鳴り、私は飛び起きた。
時計を止めてすぐさまカーテンを開けると、

「…晴れた!」

ピカピカに晴れた青空が広がっている。

(よかったぁ。毎日てるてる坊主作った甲斐があったなぁ)

と思いながら、鼻歌交じりで身支度を始めた。

顔を洗い歯を磨いて、髪を整えてパジャマを着替える。
タンスから取り出した服は。

(じゃじゃーん。今日のために買った白いレースのマキシスカート!)

裾がヒラヒラ軽やかに揺れるのが春っぽくていいなぁと思って。
ちょっと大人っぽいし。

私はいそいそとそれに着替えて、朝ご飯を食べに一階へ降りた。



「おはよう、愛生」

食卓に行くと、すでに鉄平くんがいて朝ご飯を食べていた。

「晴れて良かったな」
「うん」
「駅まで送ってやろーか? 3泊もするんだったら、荷物重いだろ?」
「えっ」

思わぬ申し出に、私は勢いよく首を横に振って断った。

「だ、大丈夫! そんなに重くないから! 鉄平くんだって、今日部活なんでしょう? いいよいいよ!」
「…そうか?」
「うん、大丈夫!」
「そっか。わかった」

いつもの笑顔のゴリ押しで押し切られたらどうしようと思ったけれど、鉄平くんはあっさり引き下がった。

「じゃ、キョンちゃんによろしくな。道中気を付けて楽しんでこいよ」
「う、うん。お土産楽しみにしてて」

と言いながら、私は密かに胸をなでおろした。

(だって、幸男くんと駅で待ち合わせしてるのに。鉄平くんが来たら、キョンちゃんと行くってことがウソってバレちゃう…!)

それから朝ご飯を食べ終えて、私たちは同時に家を出た。

「じゃあな」
「うん、行ってきます」

鉄平くんは学校へ、私は駅へ。
それぞれ反対の方向にあるきだした。

(今日から三日間、幸男くんとふたりっきり…!)

と、すっかり舞い上がっていた私は。

「……」

鉄平くんが立ち止まり、疑いの目を私の後ろ姿に向けていたことは、全く気づいていなかった。
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