風、吹けば恋 特別編
□intermission
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森山は、落胆していた。
「どうしてなんだ…どうして、誰一人来れないんだ〜…」
その原因は、数日前にさかのぼる。
海常バスケ部の元チームメイト、笠松のカノジョである愛生をはじめとする合唱部の面々をドライブ旅行に誘ったのだが、全員予定が立て込んでいて行けないと断られてしまったのだ。
「仕方ないさ。みんな色々忙しいんだ」
そんな森山を同じく元チームメイトの小堀が慰める。
「オレたちだけで行けばいいじゃないか。きっと楽しいぜ」
「そんなのいやだ!」
森山は小堀の慰めを振り払うように叫んだ。
「オレのファーストドライブで助手席に座るのが男だなんて…そんなの、そんなのしょっぱすぎるぜ…」
「…それを言ったら、正確にはみんな初めて助手席乗せるのは、教習所の教官なんだけどな…。それがたまたま女の場合もあるけど…」
そんな小堀の冷静なツッコミも耳に入らないくらい、森山はすっかり意気消沈しきっていた。
どうやら、返事を聞く前からあれこれ計画を立てていたらしい。
小堀はひとつため息をついてから言った。
「森山、元気出せよ。マジバーガーおごってやるから、な?」
そして、森山を引きずるようにして近くのマジバーガーに入った。
高校卒業以来、森山と小堀は暇を持て余していた。
春からは、森山は予備校生で小堀は地元の大学に、それぞれ進路が決まっている。
しかし、それまで取り立てて準備することもないので毎日が暇だった。
今までは退屈など感じる余裕もないほど部活に打ち込んでいたので、こんなことは初めてで二人は戸惑っていた。
もちろん時々バスケ部に顔を出すことはあったが、バスケ部はすでに早川を部長とする新たなチーム編成でスタートを切っており、そんな中何度も顔を出すのも忍びなく、控えるようにしていた。