風、吹けば恋 特別編
□世界はキセキとハッピーでできている@
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ここは、神奈川県にある公立F高校。
私は水沢愛生。
来月には、ついに三年生になる。
現在、春休み真っ只中にもかかわらず、私たち合唱部は毎日部室に集まっていた。
来たる新学期に備えて、新入生に配る入部勧誘のチラシ作りと、新入生歓迎会の部活紹介の時に歌う楽曲の練習のためだ。
その合間の休憩時間。お菓子を食べながら雑談していたら、
「ん?」
私のケータイに一通のメールが届いた。
「……」
思いがけない内容に、私は液晶画面を見て首を傾げる。
「どうした? 愛生っちょ」
すると、キョンちゃんが私に声をかけた。
「あ、森山さんからでなんか…」
私は顔を上げて言った。
「今度みんなで旅行に行かないかって」
「「「「旅行〜?」」」」
唐突な話に、部員のみんなは不思議そうに声をあげた。
私はメールを確認しながら答える。
「うん。森山さんと小堀さん車の免許獲ったんだって。だから新学期が始まる前に、海常のみんなと私たちでドライブ旅行いこうって…」
「そりゃ楽しそうだけど…なんで私たちも? 海常のみんなで行けばいいのに」
「森山さん、自分が運転する時は助手席には女の子に乗ってほしいんだって。だから…」
「それが理由?!」
そうキョンちゃんが呆れる一方で。
も〜ちゃんがニコニコしながら口を開く。
「森山さんたち、車の免許獲ったんだぁ。すごいねぇ。なんだか大人って感じだね」
「そうだね」
「笠松さんも合宿で獲りに行ったんでしょう?」
「うん」
「へ〜、もう乗せてもらったんですかぁ?」
と、私とも〜ちゃんの会話に入ってきたのは貴志さん。
私が質問に答えるのを待たず、ウットリと言葉を続ける。
「いいですよねぇ。男の人が運転する姿って。普段より3割りぐらい色気が増しますよねぇ」
「へぇ…そうなんだ」
「そうなんだって、まだ乗せてもらってないんですかぁ?」
「うん。だってそんな遠出することないし…」
「え〜、もったいなぁい」
「あ、でも」
私は言った。
「今度旅行する時に、乗せてもらえたらいいなぁ」