続 風、吹けば恋

□第42.5話 一等星になれなかった君へreprise
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試合終了のブザーが鳴る。

その瞬間、オレの高校バスケは終わった。

流れる汗も乱れる呼吸もそのままで、整列し礼をする。

涙はない。

それからベンチに下がり、観客席に向かい頭を下げる。

まだ、涙はでない。

そして控え室に引き下がってからも。

不思議と涙は出てこなかった。

まだ実感がないからなのか。

気持ちは、あまりにも落ち着いて。


だけど、終わったんだ。



「うぅううぅう〜〜〜!!」

早川がデカイ体を震わせて泣きじゃくる。

「ほら、いつまでも泣くなよ」

そんな早川に中村が歩み寄りタオルを手渡す。それでも早川は泣き止みそうにない。

「でも、キャプテンたちの、最後の、試合だったのにっ…」
と早川がしぼりだすように言うと、森山や小堀たちは言葉もなくうつむいた。

三位決定戦。
大きく点差を突き放されて、オレたちは敗れた。

エースである黄瀬の欠場。
昨日の試合の疲労の蓄積。
チーム状態がベストだったとは言えない。

だが、言い訳にはならない。

その中でも力は尽くした。
それでも負けた。
これが、実力だったということだ。

静まり返る室内に、早川の泣き声だけが響いている。

「……」

オレはひとつため息をついてベンチから立ち上がり、早川のそばまで歩み寄る。そして、

「いつまでもメソメソしてんじゃねぇ!」

と、ヤツの頭を小突いた。
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