続 風、吹けば恋

□第42話 一等星になれなかった君へ
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‘‘そのスッカスカの辞書にリベンジって単語追加しとけ!”

そう言って不敵に笑った顔。

‘‘冬の大会に出る。借りは、そこで返す”

泣き腫らした目に宿った強い意志。

‘‘今度こそ……!”

そう言った時の真っ直ぐな横顔。


私はずっとみてきた。
そのすべてを。

だから、信じてる。
今度こそ、君の笑顔がみられること。


勝利の女神は気まぐれで優柔不断だけど、ちゃんとそのひたむきさをみてくれている。

だから、最後にはきっと振り向いて微笑みかけてくれる。



じわりじわりと点差がつめられていく。

黄瀬くんの足の不調による突然の途中交代は、海常に大きな動揺を与えた。

それは誠凛にも少なからず影響はあったはずだ。
だけど、誠凛は冷静だった。

同情は、あったはずだ。
だけど、誠凛は黄瀬くんの抜けた穴を見過ごさず徹底的に攻めてきた。

それこそが、誠凛の海常に対する誠意だったのだと思う。

海常も笠松先輩のもとチームを立て直し、なんとか誠凛の猛攻を耐え忍ぶ。

早川くんと中村くんのダブルチームで火神くんをマークする。

森山さんがシュートを打つ。

小堀さんが鉄平くんとポジションを争う。

一丸となって黄瀬くんの抜けた穴を埋める。

だけど、火神くんを止められない。
火神くんが止まらないのだ。

これまでの試合では火神くんが頼もしく感じたのに、今は脅威となって海常の前に立ちはだかる。

同点で試合は折り返しを迎えたけれど、誠凛の勢いがこの後も続くであろうことは、誰から見ても明らかだった。

「……」

インターバルで選手たちが控え室へ下がって行く。

私は笠松先輩をみつめた。

笠松先輩の目には諦めの色などないけれど、ひそめた眉と真っ直ぐに結んだ唇が、現在の苦境を物語っていた。

「……っ」

下がって行く前に何か言葉をかけたかったけど、言いかけて口を閉ざした。

頑張っても、あきらめないでも、そんなのもう笠松先輩たちはじゅうぶんにやってる。

「……」

私は何も言えず、黙って笠松先輩を見送った。

(情けないなぁ…)

ひざの上に置いた手をグッと握った。
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