続 風、吹けば恋
□第31話 引越ししましょ!
1ページ/16ページ
引越し当日の朝。
私はTシャツにジーンズ、髪の毛はひとつにまとめて動きやすい服装で、引越しを手伝ってくれる誠凛のみんなを待った。
9時ちょうどにインターホンが鳴り、玄関を開けると、そこには鉄平くんをはじめとする誠凛バスケ部の皆さんが勢ぞろいしていた。
「おはようございます。皆さん、今日はお忙しいところ朝早くからありがとうございます」
と私が頭を下げると、
「まあまあ、堅苦しい挨拶はそこそこにして、さっさと始めよーぜ」
と鉄平くんがニコニコ笑みを浮かべながら言った。
「愛生の部屋、二階の突き当たりだったよな?」
「うん、運び出す荷物も家具も、全部そこにあるから、お願いします」
「りょーかい。あ、リコは後から
親父さんと軽トラで来るから。お邪魔しまーす」
そして、鉄平くんを先頭にして、
「お邪魔します」
と、みんな口々に言いながら入っていく。
もちろん、その中には。
「!」
バカ…じゃない、火神くんの姿もあるのだけど、初対面で怒鳴りつけられて(私が悪いんだけど)、すっかり苦手意識が出来てしまった。
「お、おはよう、火神くん。今日はありがとう」
それでも手伝いに来てくれたので、勇気を振り絞って声をかけてみた。
「別に。監督命令で来ただけだし」
と火神くんはそっけない返事。
「うん。でも、ありがとう」
ともう一度言うと、
「だ、だから、別にいいって!」
と、火神くんは赤い顔して行ってしまった。
(また怒らせちゃったかな…)
としょげていたら、
「お邪魔します」
と、私の背後をすうっと通り過ぎていく気配を感じた。
驚いてみてみると、
(あ、確か黒…黒木くんだっけ?)
黒木くん(←ちがう)が火神くんに続いて、家に入っていくところだった。
私も家の中に戻り自分の部屋へ上がろうとしたら、リビングで両親と鉄平くんが話しているのをみかけた。