続 風、吹けば恋
□第26話 ふたりは恋人
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みとれてしまうの。
短い黒髪のはねる毛先から、
はっきりとした形の眉、
黒目がちの大きな目、
形の良い薄い唇、
細い首にしっかりとある喉ぼとけや、
大きな手、
節くれた長い指、
そして、不機嫌そうに寄せられる眉間のシワまでー。
「…何、人の顔しげしげ見てんだよ」
「はっ!?」
声をかけられて、私は我に返った。
私の目の前に座る笠松先輩は、いぶかしげに眉をひそめて、私を見返している。
「オレの顔になんかついてんのか?」
「あ、い、いえ!別に何も!」
みとれてましたなんて言えなくて、ストローをくわえてそのまま口をつぐむ。
すると、笠松先輩は腑に落ちない顔をしたまま、再びハンバーガーにかぶりついた。
そんな表情も見逃したくなくて、またこっそりみつめたら、すぐに目が合った。
「……!」
途端に、お互い真っ赤になる。
笠松先輩はゴクリと飲み込んでから言った。
「だから、さっきから何なんだよ、お前!」
「ご、ごめんなさい!」
(だって、何ひとつ見逃したくないんだもん!)