続 風、吹けば恋

□第26話 ふたりは恋人
1ページ/12ページ

みとれてしまうの。

短い黒髪のはねる毛先から、
はっきりとした形の眉、
黒目がちの大きな目、
形の良い薄い唇、
細い首にしっかりとある喉ぼとけや、
大きな手、
節くれた長い指、
そして、不機嫌そうに寄せられる眉間のシワまでー。

「…何、人の顔しげしげ見てんだよ」
「はっ!?」

声をかけられて、私は我に返った。

私の目の前に座る笠松先輩は、いぶかしげに眉をひそめて、私を見返している。

「オレの顔になんかついてんのか?」
「あ、い、いえ!別に何も!」

みとれてましたなんて言えなくて、ストローをくわえてそのまま口をつぐむ。

すると、笠松先輩は腑に落ちない顔をしたまま、再びハンバーガーにかぶりついた。

そんな表情も見逃したくなくて、またこっそりみつめたら、すぐに目が合った。

「……!」

途端に、お互い真っ赤になる。

笠松先輩はゴクリと飲み込んでから言った。

「だから、さっきから何なんだよ、お前!」
「ご、ごめんなさい!」

(だって、何ひとつ見逃したくないんだもん!)
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ