風、吹けば恋
□第16.5話 心みだれてreprise
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茂みからこぼれる妖しい声から逃げ出そうと、薄暗い公園を走った。
明るい通りまで出てきて振り返ると、水沢はすっかり息があがっている。
大丈夫か、そう声をかけようとしたら、水沢とまっすぐに目があった。
夜の公園のあやしい雰囲気に飲み込まれてしまったのだろうか。
このまま水沢を抱き締めてしまおうか。
そんな衝動にかられた。
言葉なんかで上手く気持ちを伝える自信なんて、オレにはない。
それならいっそ、嫌われてもいい。抱き締めてしまおうか。
……って!!
(オレは何考えてんだ…!!)
自分で自分の考えに戸惑っていたら、
「…笠松先輩」
水沢が、口を開いた。
まだ呼吸も整わないままで。
再び衝動にかられそうになる。
「お話は…」
「いや!」
堪えろ、オレ。
そんなことして自分が満足しても、水沢を悲しませるだけだろ。
「…今日は、もう、いい。遅くなるといけないから、帰るぞ」
と言って、オレは水沢に背を向けて駅の方角へ歩き出した。
すると、左手を強く引かれた。